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お兄ちゃんと呼んでくれ!

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アメリカは普段好奇心に輝く大きな目を、これでもかと驚愕に見開いた後、厳かに瞑った。
そして暗い面持ちで口を開く。
俺はまるでこれから裁判の結果を聞く被告人の様な気分だった。

「俺が…俺が、たとえまだ心の奥底で君を"そう"だと思っていたとしても、それを口にすることはないよ」

審議の結果に愕然とする。
それこそ天変地異でも起こらなければね、と付け足すアメリカに俺は一瞬国民の大事を思う心を放り出し、世界滅亡一歩手前を望んだ。

だが待てよ、俺は腐っても天下の大英帝国様だぜ、と思い直す。
俺が望んで手に入らなかったものなんて、それこそ目の前にいるこいつくらいなものだ。
何故だか気持ちが大きくなって、むくむくとそんな気がしてきた。
鳴かぬなら鳴かせてみせれば良いのだ。たとえどんな手を使おうと。
友人の家の天下人もそう言っていたらしいし。

「なあ、アメリカどうしたら言ってくれるんだ。俺はお前のその言葉さえ聞けたら他に何もいらないのに」

心の声より幾分下手な言葉だと思うやつもいるだろう。
だがこれは作戦なんだからな。って俺は誰に弁解してるんだ。
ともかく、俺の哀れっぽい言葉に感じ入るものがあったんだろう。
アメリカは切なそうに眉を寄せた。
おお、可哀相に俺の天使。お前にそんな顔をさせる奴はどこのどいつだ。

「俺達は欲深い生き物だよ。それだけ、なんて思っていざ与えられたら、次が欲しくなるのは目に見えているよ」

そんなことはない、と言い切れる自信がなくてほんの一瞬言葉に詰まる。
アメリカが俺に全てをくれると言うのなら、俺は何だってするだろうと確信を持てるからだ。

「それに君がそんな事を言うなんて変だよ。やっぱり君はもう相当酔っているよ」

アメリカが残念ながら、と余命宣告をするように目を逸らす。
その体がゆらゆら揺れているように見えるのは、成程俺が酔って覚束なくなっていたと言う訳か。
それならいっそ好都合だ。
酔った勢いと言う奴で、普段しないようなアクションを起こしてしまえばいい。
何、その後の辛く険しい後悔という名の殉教路は素面の俺に丸投げだ。

アメリカが席を立とうと椅子から尻を浮かせた瞬間を狙って腕を掴み、強く引いた。
酔っ払いとこちらを侮ったアメリカは面白いくらい簡単に腕の中に収まった。
止めてくれよ、と可愛く嫌がる様子がなんともいじらしい。
いい具合に近くにあった耳元にかじりつき、欲望を音にして捩込むことにする。

「なぁ、アメリカ…」

その直後ヒュ、と風切りの音。こめかみに鈍い痛みを感じ、俺の視界はフェードアウトした。