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あさめしのり
あさめしのり
novelistID. 4367
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優越故の劣等感を何と呼ぶべきか、わたしは知らない

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 にぶちんの彼も、いつか自分の魅力に気づくのではないか。いつか自分のほうを向いてくれるのではないか。フランスはずっとそんな幻想を抱いていた。だが、認めざるを得ないだろう。自分は、彼の恋愛対象になりえないのだ。
 醜いよりは美しい方がいい、センスがないよりはあった方がいい。だが、あまりに美徳を兼ね備えていると、敬遠される。イギリスがアメリカに構うのはそういうことだ。顔かたちは整っているものの、まるで着飾ることに興味のないアメリカ。家事はおろか料理ひとつできないアメリカ。何事も大ざっぱでplay now pay laterな国民性をそのまま反映したような、計画性のないアメリカ。
 だが、イギリスはそのすべてを兼ね備えたフランスよりそのすべてを持ち併せていないアメリカを愛し、構い、何かと気にかけている。別にそれはイギリスに限ったことではない。イギリスが悪いわけでもないし、彼を責めるつもりもない。世間を見てみればいい、やれ才媛だやれ美女だといって褒めそやすが、結局のところ大部分の男は自分よりか弱くちいさな、守るべき存在をかわいいと思うものだ。持って生まれた男の性とでも言うべきか、フランスも男だからわかる、男という生き物はイギリスに限らずそういうものなのだ。
 イギリスより背が高く、イギリスより聡明で、イギリスより年上のフランスを、イギリスはきっと愛せはしない。上背だけはなんとか追いついたもののイギリスの体は一向に逞しくならなかったし、ましてやフランスが彼より年上であるという事実はこれからずっと変わらない。
 今まで同様、フランスの美徳がフランスの恋路の邪魔をする。こんなにも彼を好きで、彼のことを大事に思うのに、ほかならぬフランス自身がその障害となっている。フランスは思う。もし自分が、イギリスより年下で、ちいさくて、弱くて、そうたとえば彼の植民地だったなら、彼は自分を愛してくれただろうかと。



 会議用の円卓に、イギリスをおちょくるアメリカの声とアメリカを罵るイギリスの罵声が響く。ドイツが机を叩き、スイスが発砲するまで秒読みといったところか。
 会議中にもの食うなっつってんだろ、クソメタボ! とイギリスが言えば、おそらくやーなこったとでも言っているのだろう、アメリカの口がなかにものを含んだまま行儀悪く動く。イギリスが円卓に身を乗り出したところを、ついに見かねた日本が制止に入った。だめですイギリスさん。うるせえ、一発殴らなきゃ気が済まねえ! もみあう年長者を無視して、アメリカは口をもぐもぐ動かしたまま、我関せずと言ったふうに目線をレジュメに落としている。
「お前が羨ましいよ、アメリカ」
 図体と態度ばかり大きくなっているという自覚はあるのか、アメリカはむっとしたようにスナック菓子の袋につっこんだ手もそのままにフランスに顔をしかめてみせた。
「なんだいそれ、新手の嫌みかい。君、いつも俺のことやれしゃれっけがないだの味音痴だのって馬鹿にするじゃないか」
「そうじゃない」
 嫌みではない。フランスはほんとうに、苦しいくらいの切なさでアメリカを羨んだのだ。
 アメリカが不思議そうな顔をした。どうしてそんなことを言い出したのか、説明を求めている。だが、フランスは何と言うべきかわからず、名状しがたい何者かに名前をつけることもできず、ただもう一度ばかみたいに、俺はお前が羨ましいと呟いた。