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如月ヒメリ
如月ヒメリ
novelistID. 13058
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You seem to be totally snow.

INDEX|1ページ/1ページ|

 
雪が降っている。とめどなく、ふわりふわりと。
羽毛のようなそれは、ゆっくり穏やかに落ちてきて時間の感覚を狂わせる。
現実味の無い場所。それだけに雪が余計目立っていた。
かつかつかつ、と足音を響かせ、そんな風景を横目に鬼男は歩いている。
彼の持つお盆には温かいお茶が2人分。
冷めてしまわぬようにと少し早足で歩きながら、ちらりと外のほうへ視線を向けた。

雪。真っ白でどこかあの人に似てる気がする。
第一、白、という色はあの人にとても似合っていると思う。だだし、彼の白は絶対に他人の色に染め上げられたりしないが。
そして、つかみどころがない。
その上マイペースで、なのに人をひきつけて。
さらには人を狂わせてしまうのだから、ああ、どこまでも似ているではないか!

外で静かに舞い、感覚を狂わせる雪。楽しそうに笑って、自分を狂わせる彼。どこが違うと言える?

ああ、そうだ、主導権を握るのもいつもあの人。
会話だろうが、なんだろうが、全て。
無邪気な笑顔を浮かべながら、持ち前のマイペースで自分を狂わせる。

ああ、だからあの人は苦手だ。




いつの間にか足を止めてしまっていたらしい。
お茶から立ち上っていたはずの湯気はすっかり消えてしまっていた。
あの人のことを考えていると、歩いていようが仕事をしていようが、止まってしまう。
全てを、奪われてしまう。

こんなところでも彼の影響を受けるなんて、僕も相当堕ちたものだ。
彼に縛られてしまうなんて。


そんなことを考えているうちに書斎に着いた。
こんこん、と控えめにノックすると、鬼男くん?どうぞ、とあの人の声が聞こえてくる。
「失礼します。」
鬼男はそう言って重いドアをふさがっていないほうの手であけた。
中はいつもと変わらない。色々な書類が散乱している。
唯一、さっき答えたはずのあの人がいなかったことを除いては。
「は・・・っ?」
思わずそんな声をあげたとき、後ろから誰かが彼を抱きしめた。
ちゃぷん、とお盆の上に乗っていたお茶が揺れる。
あの人だ、と鬼男が気づいたときにはすでに体の自由は奪われていた。
「何してんですか。」
努めて冷静な声を出すと、彼は鬼男を狂わせる無邪気な笑みを浮かべながらつぶやく。
「いや、あんまりにも鬼男くんが遅いからさー。」
「すみません、お茶冷めちゃいました。っていうか離せ変態イカ。」
彼は鬼男の言葉を無視して、さらに腕に力をこめ、今度はさっきよりも小さな声で
「雪、見てたの?」
とつぶやいた。
どうして分かったんですか、と鬼男が訊ねると、体冷えてる、とだけ彼は答えた。
「本当に鬼男くんは雪が好きだよねぇ。」
何で?と訊ねられて、鬼男は少し不機嫌そうな顔になる。

貴方に似ているから、って言う答えをもう知っているんでしょう?
すべて貴方にはお見通しなんでしょう?

分かってるくせに。分かってるくせに。
そう言って貴方はいつも僕を狂わせるんだ。
分かっていて、それでいて答えを訊ねる。
そして自分の考えと同じことを言う僕を見て、満足する。

ずるい。
どこまでも、貴方はずるい。

だから。

貴方の望んでいる答え、ほしがっている答え。
そんなもの、絶対に言ってやるものですか。


「雪は綺麗だから好きなんです、貴方なんかと違って。」
皮肉をこめて言ってみれば、少しは彼も困ると思ったのに。
彼は、変わらない笑みを浮かべて言った。
「そうだよねぇ。雪は綺麗だ。俺なんかと、似ても似つかないものね。鬼男くんにぴったりだ!」

ああ、もう何なんですか。
本当にそんなこと思ってるんですか。
それは本当に心からの言葉ですか?

どこまでも意地悪ですね。どこまでも貴方はずるいです。


「・・・そうですか。」
鬼男はそれだけ言って窓のほうに視線をずらした。
外は、さっきとまるで変わらない。
雪が、ふわりふわりと落ちている。
ただゆっくり、穏やかに。

ふわり、ふわり、と。




END