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散った桜と小さな鈴蘭

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「桜、もう散っちゃったかなあ。」

そう小さな声で言った狩沢を見ると、いつになく寂しげな表情を浮かべていた。
それが、何だか儚げで、消えてしまいそうで。

「桜が見たいんなら、まだ咲いている所連れて行ってやるぞ?」
そう言うと、狩沢はあはは、と乾いた笑みを浮かべありがとう、と言った。

「咲いて牡丹と言われるよりも、
散って桜と言われたい、って言ってたの。」

狩沢は、静かな声で言った。

「友達がね、そう言って、1週間後に自殺したの。
その子の遺言で、桜の傍の墓に埋葬されたんだって。
友達がそんなにも賞賛した桜の散り際は、そんなに綺麗だったのかなあ、って思ったんだ。」

2人しかいないワゴンの中、狩沢の声は
やけに大きく響いた。

「……俺は、狩沢は桜よりも」
狩沢がこちらの方を向く。

「鈴蘭の花だと、思う、けど」

微笑んだ狩沢は、とてつもなく綺麗で、美しくて、
手を伸ばしたら消えそうで 怖かった。



作品名:散った桜と小さな鈴蘭 作家名:日丘