正臣とろっちー
俺の後ろを六条が追いかけてきた。
「何ですか、俺にはもうあんたに用はないんだけど」
後ろを振り返らずに言えば六条が俺を抜かして前に立った。
「いや紀田が何怒ってんかわかんねえんだけど」
「別に怒ってませんが」
「いや怒ってる、俺何か気に触ることしたか?」
真剣な顔をして聞いてくる六条にため息を吐く。
「紀田」
「・・あんたが無駄に俺にかまってくるからですよ、わかったら俺の前から消えてください」
俺はそれだけ言うと六条の隣を通ろうとした。
「待てって」
「離してもらえますか・・なんでそんな顔してるんです」
俺の腕を掴む六条の顔を見ると今にも泣きそうな顔をしていた。
「なぁ、俺の気に入らない所言ってくれよ、治すから・・」
「だから俺に構ってこなければ別にいいんですよ」
「俺はお前が好きだから・・横に居て喋りたいし触りたいんだ」
「・・別に俺以外でもいいんでしょう、早く埼玉に戻って女の子たちと遊んでたらいいじゃないですか」
「だから俺はお前がっいっ?!」
ダンッと壁に背中を叩きつけたれた六条が顔を顰めた。
「それ以上言うな」
「なん、でだよ」
「・・俺の気も知らないで」
小声で呟いた言葉が聞こえなかった六条が顔を近づけてきた。
「今なんて言っ」
六条が目の前で驚きに目を開いていた。
至近距離。
目をじっと見つめていると六条は耐えられなくなったのか目をぎゅっと瞑った。
「・・・反応が始めてキスをした女の子みたいですね」
そう言うと六条は頬を薄く染めて口を金魚のようにパクパクと動かした。
「なっなんで」
「何でって・・俺六条さんの事好きですからね」
「えっき、紀田俺のこと好きなの?!」
「好きだったらいけないんすか?」
「いやだって紀田いっつも俺といると不機嫌な顔してっから・・」
「それはあんたがいっつも女連れて来るからだろ」
「う・・俺紀田と二人っきりとか心臓持たねえし」
「あんたって結構ばかだよな」
「うるさい」
六条は耳を赤くして言った。