永遠、余波
たった一つだけ後悔をした。
人生という生き道で。
貴方に出会ってしまった。
これが、後悔。
【永遠、余波】
青年少女が寝転がっても十分に余るほどの空きのベッド。
そんな寝床の上に恋人同士だろう2人は抱き合っていた。
生まれたままの姿で、互いの体温を馴染ませるかのように肌を寄せている。
それまで沈黙で静かだった空間に女性特有の隔てのないソプラノが響いた。
「臨也さんは永遠を信じますか…?」
青年は突然の問い掛けに戸惑うような素振りも見せず。
逆に何故だか嬉しそうにして、優しく少女に微笑んだ。
そして質問に完結に答える。
「信じては、いないよ。でも、」
帝人君が信じてるなら信じるかな、と。
傍から見れば恋人同士のただの惚れ気にしか聞こえないだろう。
だが生憎この場には当人達しか居らず、突込む者は誰もいなかった。
「僕は、──貴方と会うまでは信じていました」
「それは俺に会ったのが間違いだった、ってことかな」
「違います、それまでは『永遠』に続く一人の人生だと思っていました。でも、貴方と出会ったこの世界は『永遠』よりも大きなものがたくさんあって……とても僕だけでは生きていけない」
だから、今は永遠は信じていません。
そう少女ははっきりと青年に言った。
その答えに青年も毅然として少女の瞳を見つめる。
「なら、俺が君の『永遠』になってあげる。ずっといられるように。だから、帝人君も俺の『永遠』ね」
理解し難い単語も、彼が言えば皆、言葉になってしまうようだ。
柔らかな笑みを向ける彼に少女もまた。
そして二人の『永遠が』は始まっていた。
「僕を愛してください、臨也さん」
それが、彼女の最初で最後の後悔。
人生で初めて男を愛してしまったのだ。
この二人を見ていれば人々も『永遠』とは何なのかを分かりそうだ。
fin.