哀しい嘘
友達はいなかったし、テストは散々だし…
でも、リボーンと出逢ってからオレの運命は大きく回り始めて
獄寺くんや山本、ランボにお兄さん…敵だった骸や黒曜の人達
…そして、雲雀さん
たくさんの大切な人に出逢った
高校へ行っても、大学へ行っても、イタリアへ行っても
みんな、変わらずオレと同じ道を歩んでくれた
時々、みんなを巻き込んだことで後悔していても
彼らは笑って「気にするな」と言ってくれた
いつまでもその中にいられると思ってた
いつまでもあの人の隣に立てると思ってたのに
オレはあと何年みんなの傍にいられる?
オレはあと何時間彼の隣に立てる?
人知れず、涙が溢れた
死、がリアルに襲い掛かってきた
けれど、それよりも一番恐れているのは―
みんなの泣く顔を見たくない
みんなの悲しい記憶に自分がいてほしくない
最後は楽しい想い出の中に自分を遺してほしい
…彼は、泣かない
彼なら独りでもきっと、大丈夫
「きっと…」
「大丈夫じゃないよ」
頬に触れる骨ばった、シルクのように滑らかな手
彼を見上げれば、黒い瞳は揺れている
…珍しい、と思った
そして同時に、嬉しいとも思った
自分は彼の中で大切な存在になれた気がした
「後はリボーンやXANXUSに任せてますから、大丈夫ですよ」
「そうじゃない」
少し苛立ちを含ませた声にオレは首を傾げる
「?」
「…君は、いつ帰ってくるの?」
オレは何も言わない、言えない
だって、オレは二度と帰れるか分からないから
「…すぐです、雲雀さん」
「嘘吐き」
彼はそう言ってオレを抱き締めた
彼の体温が散々流したはずのオレの涙を誘った
…嘘吐き、と呼ばれてもかまわない
それ以上の嘘を、オレは愛しい貴方に吐いているのだから
[哀しい嘘]
貴方を置いて逝くオレを許して