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APHログまとめ(朝受け中心)

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 だが同時に、これもチャンスなのではないかと思う。柄にもなく、恋のキューピットでもやってやろうと思ったのだ。
 フランシスが携帯端末を取り出した。
 フランシスの長く綺麗な指が、慣れた手つきでボタンを押していく。

「あ、もしもしアーサー? 今アントーニョから聞いたんだけど、恋人出来たんだって? おめでとう。今度こそお前の変態プレイにも付き合ってくれる人だといいな」

 ひくり、とアントーニョの喉が鳴る。
 よりにもよって、そんな言い方をする人間はいないだろう。いや、いる。目の前で不機嫌さと不愉快さと揶揄を交えて電話を掛けるフランシスだ。
 テーブルに対面するように座っているアントーニョの耳にも、フランシスの携帯端末からの物凄い怒声が聞こえて来た。電話の相手はアーサーらしい。
 子供か、というアントーニョのぼやきもフランシスの耳には届かない。
 この態度ではアントーニョの想像は大きく外れているのでは、と不安になる。
 アントーニョの存在など忘れたかのように、フランシスは電話に集中している辺り、外れてはいないのだろう。
 だからアントーニョは思うのだ。普段から愛の国を自称する割に、どうしてその相手には気の利いた言葉を言えないのか。飾り立てた愛など、伝えたところで響かないだろうに。
 アントーニョの指先がグラスの縁をなぞる。一人だけ蚊帳の外だ。飽きはしないが正直つまらない。

『お前今すぐそこに行くから待ってろ!』

 そんな怒鳴り声で通話は切れた。
 アントーニョも思わず顔を上げてフランシスを見る。

「怒らせちゃった」

 悪びれもなく言ってのけたフランシスに、アントーニョは久方振りに殺意が湧いた。

 息を切らせたアーサーが到着すると同時、冒頭の会話が繰り広げられることになる。
 互いの恋人がいかに素晴らしいか。
 手を繋いで歩く穏やかさ。
 熱く交わる情交の興奮。
 いくら夜も更ける酒場だといっても、少々過激過ぎる。互いの性生活を暴露し始めた二人に、アントーニョはなす術もない。フランシスはともかく、アーサーの語る感動的なプレイ内容は放送コード的にも公共の場で話すにも完全にアウトである。
 ちらほらと「あんな子供がンなことすんのかよ……」という周囲の言葉と視線に、アーサーは気付くべきだ。
 はあ、とアントーニョは溜息を吐く。グラスに張られた水面が波打った。
 溜息は好きではない。興奮が逃げていくし、幸せも寄ってこない。

 フランシスは、地味な容姿を好む。
 反対にアーサーは、必ず金髪を相手に選ぶ。そしてその人物は碧眼である確率が高い。
 どちらかに恋人が出来れば、競うように残りもパートナーを作る。そして必ず相手が選んだパートナーをこき下ろす。
 アルコールに溶け切らない頭で、アントーニョは思う。

「お前ら二人ともアホやわ」

 自分の方が相手より優れていると思いたいがために、ステータスとして恋人を作る。
 フランシスもアーサーも、そう思っているのだろう。普段から罵り合っている両者が恋人を引き合いにして自慢をしていても、他の国も同じように思う。
 しかしアントーニョだけは楽しくない酒を飲んだ分だけ、どうしようもない馬鹿二人の本心に近付いてしまうのだ。
 肝心要の本人達ではなく、蚊帳の外の自分が気付いてどうするのだ。
 そんな溜息も、酔っ払い二人の喧騒に飲み込まれてしまった。

090419