見えない星は光っているか
「 その後さ、すごくお母さんに怒られたの。何時だと思ってるの馬鹿って 」
「 当たり前だろ。 10時まで娘がどこに居るかもわからないってなったら不安にもなる」
「 まあね。 でもあの時の哉太、すごく可愛かったなあ~ 」
「 悪かったな、あの時だけで 」
ベッドに二人向かい合いながら寝転んで、ふふと笑いあう。
月子が左手で、横髪を耳にかける。
その左手の薬指には、シンプルなデザインのシルバーリング。
数年前、俺が月子に上げたものだ。
月子と、一生を歩んでいくと誓い合った時に。
「 哉太 」
「 ん?なんだ 」
「 哉太はあの時、星なんかないって言ったじゃない 」
「 …ああ 」
「 でもね、実は見えないだけで、あの分厚い雲の中に星が輝いていたんじゃないかって思うの」
「 …へーえ。 それまたどうしてだ? 」
「 だって、私があの時ずっと願っていたことが、全部叶ったんだもん 」
「 ……… 」
「 だって私、こんなにも幸せだもん 」
―――…あの時の俺と、同じことを考えてる。
まああの時の俺は、”もしも”という仮定の上で願い事をしていたわけだけれど。
月子の亜麻色の髪をすきながら、俺は軽く笑った。
「 なあ、月子 」
「 うん?なあに、哉太 」
「 俺も、すげえ幸せだよ 」
だって、俺もあの時の願い事が全部叶ったんだ。
俺の病気を治してください。
三人で天体観測に行かせて下さい。
俺をどこにも連れて行かないで下さい。
そして、俺の傍にずっと、月子を居させてください。
「 …つきこ 」
「 ふふっ。今の声、すごく子供みたいだった 」
「 う、うるせー!」
照れ隠しの意もこめて、月子をぎゅうっと後ろから抱きしめる。
…ああ、あの時、泣いた時と同じだ。
お前の後姿は、昔から全然変わってないんだな。
俺の腕の中に居る愛おしい人を、より一層強く抱きしめた。
「 愛してる。世界で一番愛してる 」
流れ星様。
俺は今、すごく幸せです。
((( 星は見えなくても、きっと )))
作品名:見えない星は光っているか 作家名:透子