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子どもにも色々事情があるんです

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みんな大好き自由時間。突然、甲高い声が聞こえて、僕は声のした方に目をやった。
「伊作せんせ~」
泣きながら駆け寄ってきたのは、タンポポ組の文次郎君。裏口から靴のまま入ってきた。歩幅が狭いせいか、なかなかこちらに辿り着かない。やれやれと思いながら、自分から近づいていく。膝には砂利がついていて、所々朱色に染まっている。
「あらら、どうしたんだい?」
できるだけ柔らかな口調で尋ねる。小さな手を握ると柔らかな感触と共にざらついているのが伝わってきて、こりゃあ転んだな、と確信した。
「転んじゃったの?」
砂を払いながら問いかけると、大粒の涙を零しながら、文次郎君はふるふると首を横に振った。
「じゃあ、どうしたの?」
聞きながら、「傷口洗わないとね」と文次郎君の腕を引いた。土足なのを思い出し、小さな靴を脱がせる。お尻には大きな泥が染みついているので、着替えが必要かもしれない。
「歩ける?」
顔を覗きこむと小さな口がゆっくりと動いた。
「仙ちゃんにぃ、おされたぁ」
弱々しく、震えた声で。おまけに、舌足らずな話し方だったけれど、大体何を言っているのかは分かった。
「そっかあ。仙子ちゃんかぁ」
頭に手を乗せて撫でる。それから、柱の影からこちら側を覗いているポニーテールの女の子に眼をやった。
「仙ちゃん。ちょっと、こっちに来て」
おいでおいでをする。ちょっとためらってから駆け出してきた仙子ちゃんは、頬をピンク色に染めている。その姿を見た文次郎君は、顔をくしゃっとゆがめた。その小さな体を引き寄せて、近づいてきた仙子ちゃんと向き合わせた。
「ねえ、仙子ちゃん。どうして文次郎君のこと、押したのかな?」
少し強めの口調で問いかけると、仙子ちゃんの頬の赤みがいっそう増した。その様子を見て、何となく理由が分かった気がした。
それよりも、早く傷口を洗わないといけないことを思い出して、髪型を崩さないよう、仙子ちゃんの頭を優しく撫でた。
「仙子ちゃんは、文次郎君のこと嫌いで押したんじゃないよね?」
諭すように話しかけると仙子ちゃんは、うん、とうなずいた。それから、ごめんね、と文次郎君の服についた砂を払った。文次郎君も、いいよ、と言って笑った。


傷口を洗い終わり、ついでに着替えも済ませて。楽しそうに手をつないで駆けていく文次郎君と仙子ちゃんを見て、僕は頬を緩めた。

自分も小さい頃、よく好きな子をいじめてたな。そんなことを考えながら、僕は小さく欠伸をした。