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夏と言えばスプラッタホラー

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人の骨が折れる音と言うのは意外と可愛い音だ。
ばき、なんて音を立てるのは牛とか大きい動物の骨だ。

そう思っていたのは僕が指とか細い部分とかが
折れる音しか知らなかっただけだった。
だって、今はぼき、とかごきん、という可愛くない音がする。
少し前はぐちゃ、とかごちゅ、という生々しいおとがしていた。
てっきり足とかかなと思っていたけど
にちゃぐちゅ、という音もひっきりなしにするから
どうやら肋骨のあたりを一生懸命解体しているみたいだ。
ばちん、という大きな音がして
不意に鮮明な光景が視えた。

そこからわかるのは、小学校でみた骨格標本の
骨の色は間違っていたということだけ。



「どうしたの帝人くん、どこか痛い?」
ぼうっと宙を見つめたまま動きを止めた僕に
優しい声がかけられる。
ふう、と視点を定めて上にあげると
きれいな顔に優しい笑顔を浮かべた兄さんがいた。
「…なんでも……ううん、すこしきもちわるいです」
言おうか言うまいかしばらく悩んだが、
どうせ一度視てしまったのだ。終わるまで付きまとわれるに違いない。
ぺたりと兄の腕に頭をもたせかけると
優しく手が添えられて膝に寝かせられる。

「なにが視えたの?」
冷たい指が額に触れる。気持ちいい。
「骨…」
「骨か。手足?」
「ううん…お腹…肋骨のあたり。
いっぱい掘って…何か出そうとしてた」
「へえ。帝人くん肋骨の場所わかるんだ。偉いねえ」
なでなでと髪を撫でられる。
気持ちいいはずなのにさっきから胸のあたりがぐるぐるして、
むかむかしている。
は、と生温い息を吐き出す。
すると頤に手が添えられ、兄の顔が近づいてくる。

「……は、」
口に直接注がれたのはレモネードだった。
その冷たさにほっと身体が弛緩する。
間近に向かい合う兄の紅い瞳が続きを促してくる。
優しいけれど逆らえない。
「お姉さん…だよ。高校生か、中学生かわかんないけど
セーラー服。襟がね紺色…スカーフはつけてなかったの」
「お姉さんは名前を教えてくれたかい?」
「うん。リリコお姉ちゃんっていうの」
「お姉さんを苛めたひとは教えてくれた?」
「うん。きれいなお姉さんだったって…」

そこまで言うとさっきの気持ち悪い光景が蘇って
ぎゅう、と目を閉じた。
兄さんは携帯を取り出してどこかへ電話をかけている。
不安に感じて空いている方の左手を握ると
指を絡めて握り返された。よかった、振りほどかれなかった。

やがて電話が終わると
天使のような笑顔を浮かべて兄さんは言った。
「怖いもの見ちゃったね帝人くん。でもあとちょっと頑張ろう、ね」
こくりと僕は頷いた。
いつだって兄さんのいうことは正しい。
兄さんの言う通りにすれば怖いことがなくなる。

ただ、その途中で一番怖いものを視ないといけないのだけが
苦痛だった。




相変わらず奴からの「お知らせ」は唐突だった。
国家の狗とて暇をしているわけではないのだ。
だが、奴からの情報は百発百中。
おまけに生きたレーダーともいうべき奴の弟は
早く解決してやらねば衰弱してしまう。
くそ生意気な兄はどうでもいいが素直で大人しい弟の方はわりと
気に入っている。
課長にいつも通りの手配を頼んだ後赤林を連れて車を回した。

「こんにちは帝人くん」
「こ、こんにち、は…」
「ああ、四木さん、帝人くんは体調が悪いんですよ。
いつもの通りにね。だからあんまり怖い顔近づけないでくださーい」
学生服を着た少年の背後に怯えるように小さな少年は隠れてしまう。
いや、隠れる、というより体調が思わしくないのだろう、
ふらつく身体を支えるために兄の足に縋りついているという方が正しい。
「立っているのは辛いでしょう、おいで」
そんな彼を猫の子を抱くように抱えてやれば
目をぱちぱちと瞬かせ、申し訳なさそうな色を浮かべた。
小さく消え入りそうな声で「ごめんなさいしきさん」と呟く。
生意気な兄となんと違うことか。
肝心の兄はというと何とも言えない表情でこちらを見つめている。
確かに帝人は華奢で小さいが、
奴自身も華奢な部類に入る。とても抱きかかえてやれる腕力はないだろう。
少しだけ胸がすく。

「さて、帝人くん。これからおじさんたちに色々
教えてほしいことがあるんですが、一つずつ、ゆっくりで構いません。
話してくれますか」
抱きかかえたまま自分にできる精一杯の優しい表情を浮かべて
尋ねれば横の赤林と前の折原がうげっと漏らす声が聞こえた。
よし、後で覚えていろよ。
「…はい」
だが結果として成功したらしい。
幾分か和らいだ表情で小さな子どもは自分の質問を待っている。



子どもが指示したのは市外から少し外れた場所にある小さな山だった。
ここ、と指さすのは栄養がありそうな黒い土の丘だ。
至急応援を呼んで掘らせる。
部下たちは「ほんとに出るんですか」「だって子供の情報なんて」と
不平を洩らすばかりだが仕方ない。
彼は『外すということがあり得ない』のだ。

やがて深く掘り進めていくうちに車の中で兄に抱きかかえられている子どもが
ぽつりとつぶやいた。
「もうすぐ、リリコお姉ちゃんに会えるよ」
その呟きはほぼ同時に出た
部下の「で、出ましたー!」という叫びにかき消された。


遺体は肋骨が折られ、中身の内臓のうち心臓、肺、肝臓などが抜き取られていた。
すぐさま殺人事件として緊急対策室が設けられるだろう。
「折原、今日はご苦労さん」
「いいえ、善良な一市民としてお手伝いしたまでです」
「帝人くんが、だろう」
「ええ、まあね」
そうして髪を撫でられた少年は疲労のためか眠ってしまっている。
「…毎度のことだがこれからだぞ、気をつけろ。
俺の家に来い、といいたいが肝心の俺が缶詰じゃ意味はない」
「それは前回で実証済みですよね。オートロックがあれほど意味なかったの
初めてでしたよ」
「赤林、どこか防犯完備のとこはないか」
「すいません、思いつくのが高級ホテルくらいですかねえ」
「…それでもこいつらの家よかマシか。おい、好きに使え」
カードを一枚少年に手渡す。
「わぉ太っ腹ぁ。帝人くんハーゲンダッツの新作のアイス食べたそうにしてたから
それも買っていいですか」
「それはお前だろ」





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毎回被害者をみつけて四木さんに報告したあと
サイコホラーな犯人に殺されそうになってる兄弟です。
帝人くんは非常に強い霊媒体質にくわえて
無意識下ではありますが念力系の能力もあります。
反対に臨也さんはまったくの一般人です。
事件を四木さんに報告するのは一度帝人くんが
「視て」しまうと亡骸を供養してやるまで帝人くんに
被害者のひとが付きまとい、衰弱してしまうからです。
けれどなぜか犯人に追われ殺されかかるので
そこは臨也お兄ちゃんの持ち前の頭脳と度胸で切りぬけます。