旬
「許すってどういうこと。」
「そのままだろ。ほらいけよ、また殴りたくなる。」
俺はその言葉を聞いた時、自分でもわかるくらいきれいに、一粒の涙を流して泣いた。あいつの見ている前で、まるで瞬きをするようにないてしまった。哀しかったというよりも、何もなくなってしまったかのように感じたのだ。自分を、一本支えていたものを取り払われて、一人でたてなくなってしまった。
「認めないでよ。」
見放さないでよ。俺はふと、そんなことを思った。俺を、否定するのが、お前の役割だろ、と怒鳴りつけることもしないで、心がはりさけるほどさけんでいたのに。