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あるときふとシズちゃんは俺に「許す」といった。どういうシチュエーションだったのかわからない。もしかしたら、それは俺のほうにもちゃんと言い分のある事件だったのかもしれない。
「許すってどういうこと。」
「そのままだろ。ほらいけよ、また殴りたくなる。」
俺はその言葉を聞いた時、自分でもわかるくらいきれいに、一粒の涙を流して泣いた。あいつの見ている前で、まるで瞬きをするようにないてしまった。哀しかったというよりも、何もなくなってしまったかのように感じたのだ。自分を、一本支えていたものを取り払われて、一人でたてなくなってしまった。
「認めないでよ。」
見放さないでよ。俺はふと、そんなことを思った。俺を、否定するのが、お前の役割だろ、と怒鳴りつけることもしないで、心がはりさけるほどさけんでいたのに。
作品名: 作家名:桜香湖