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最後の言葉

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頬を生暖かい液体が伝う。匂いを嗅ぐまでも無く、自分の血液だということは分かっていた。千尋を殴った人物は書類を手に入れて安心したのだろうか、すでに姿は消えている。手を伸ばして誰かに連絡しようにも、側にある妹の名前が書かれた紙を廃棄しようにも、大量に出血したせいか、全く身体が動かない。
――――死ぬのだな、と思った。不思議なことに怖くはない。
綾里の女だから‥‥分かっていたことだからだろうか。死して尚、その魂は消滅しない、と。
意識が朦朧としてくると色々なヒトの顔が脳裏に浮かんでは消えていく。失踪してしまった母、この上なく愛したセンパイ、初法廷で争った天才検事、そして最愛の妹。
そして最後に浮かんできた顔。
――――不思議なことに最後に頭に浮かんだその顔は、神乃木壮龍でも綾里真宵でもなかった。
「なるほどくん‥‥。」
小さく、その名前を呟く。死をも怖くはないと思っていたのに自然と涙が流れた。死は怖くないけれど、一つだけやり残したことがあった。
(――――『ぼくはいなくなりませんよ。』)
あの日、そう優しい嘘を吐いてくれた貴方。結局、それは嘘にはならなくて、その代わりに私がいなくなってしまうのだけれど。
センパイを亡くしてからの私は、ナニも分からなくなって、ただ息をしているだけだった。あの顔が、あの日、あの時、再び私の時間を動かすまで。
――――あの時、止まっていた私の時間を動かしてくれた貴方に伝えたかった、最後の言葉。
(‥‥こんなことになるんだったら、もっと早く伝えておくんだったな‥‥。)
――――ねえ、なるほどくん。
今ははっきり分かるの。きっと明日、私はいない。それでも、皆それぞれの日常に戻っていく。
――――私のいない、新しい日常に。
そして、その傍に私がいなくても、もう貴方は大丈夫。貴方は、見習い弁護士じゃない。貴方には私の教えられることは全て教えた。私がいなくたって、私の教えは‥‥いえ、私は貴方の中に生きている。それが私がこの世に生きていたことの証明。貴方が一生をかけて伝えていかなくてはならない私の証明。
何故か笑いが込み上げてくる。
(――――きっと。)
きっと最初から分かっていた。最後に隣にいるのは、私じゃない、ってことくらい。一瞬でも、望んでしまったことが愚かだった。
――――けれど、私は貴方に託した。弁護士としての教えは全て。だから、それで、良いの。それが、私の生き方。私の誇り。
私も、ずっと見守っていたかったけど、それも無理みたいね。
だから、それでも、どうしても、もう一度会いたくなったら、真宵の力を借りて会いに行くわ。
――――また会おうね、なるほどくん。
そして、その時には、貴方に言い残した最後の言葉を――――。
(――――ありがとう。貴方は天才よ。)
それが私の最後の言葉。
――――Last message Dear N――――
作品名:最後の言葉 作家名:ゆず