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【APH】みつけた、みつけた【米辺】

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 銀色の髪はいつも必死に何かを追いかけていた。金髪は最初はそれを眼で追っているだけだったのに、いつの間にか、全身全霊で追いかけていた。理由は分からない。ただただ、追いかけなければと感じたのだ。硝子細工のように脆い外見なのに中身は鋼鉄の少女は今日も必死に兄の背中を追いかける。
「虚しくならないの?あんたは」
 鋭い視線は全てを凍らしてしまいそうだ。大げさではない。
「別に?」
「私は時折凄く虚しくなる」
「ひとりごっこが?」
「あんたも分かってるならやめれば」
 近くに座っているのにもかかわらず、視線は合わせない。嫌われていることが分かってるから、無理に近づこうともしない。けれど、時折精神のバランスを崩して酷く不安定になる彼女を追いかけるのはもう一種の癖になってしまっていた。つまり、辞められない。中毒なのだ。厄介な中毒になったと自分でもアルフレッドは思う。振り返るとスカートにもかかわらず彼女は地面に座り込んで項垂れていた。
「君もやめなよ」
「嫌だ」
「頑な過ぎると嫌われるぞ」
「もう、嫌われている」
「知ってる」
 返答すると長い髪が揺れる。銀色の長い髪の所為でその表情は見えない。けれども唇を噛み締めていることはなんとなく想像が出来た。その声に滲む多少の苦しみと、沢山の開き直りを理解できるほどにまで彼女との距離は縮んでいた。そう、イヴァンについて少し話をするぐらいには、
「なぁ、知っているかジョーンズ、もう底まで落ちたらあとは這い登るしか無いんだ」
「知ってる」
「……でも、努力し続けるのは苦しいとは思わないか」
「だから俺にしちゃえばいいのに」
「却下だ。お前にするぐらいなら死んだ方がましだ」
「羨ましいんだぞ」
「何が」
「イヴァンは君にこんなにも想われているんだって思ったらすごく羨ましいんだぞ」
 真っ白の頬が少しピンクがかる。少し話をするようになってアルフレッドが感じたのは。見た目が放つ空気ほど、きつい性格ではないことだった。物言いは確かにぶっきらぼうで、言葉が足りないことも多い。褒めれば照れる。至って普通の女の子だ。
 ただし、イヴァンへの執着は異常なものである。
「…それは、兄さんは…私にとって…」
「好きなんだろう」
「そう、あいしているの」
「俺は君が好きだよ」
「脈絡無い」
「…そうだな、君がイヴァンを好きなように好きだよ。だから追いかけてる」
「迷惑だ」
「うん、でも一緒にいてくれるよね、逃げない」
「それ…は、面倒だからに決まっているだろう!」
 俯いていた顔を勢い良く上げる。表情の変化があまり無く、叫ぶことも少ない彼女が大きな声を出して講義した。アルフレッドはその事実に驚いて眼がまん丸になった。赤い口の中まで見える。薄桃色の唇がアルフレッドの方を向いた。瞳と瞳がぶつかった。
 ふい、一瞬にしてそれは逸らされる。けれど、アルフレッドには分かった。その瞳がとてもきれいだということが。
「……そう、なんだ。うん、分かってたぞ」
「今のは忘れてくれ」
「うん」
 今まで見たことの無い表情を、見つけた。と、彼女の先ほどの表情を思い出して、小さくがっつポーズをした。始めてみた表情、まだ、距離は縮むはず。もうすこし、彼女の後姿を追いかけよう。そして、今度は大きな花束を差し出したら、もっと吃驚した表情が見れるかもしれない。