太陽に焦がれる
「なあ、ギルちゃん…ええやろ?」
普段なら艶っぽく腰にくる声だが、普段のそれよりも高く幼い。
しかし、今自分は押し倒されている、その声の持ち主に。
どうしてこうなってしまったのかはプロイセンにはわからない。なんとか振りほどき、彼から離れたいのだが、今のスペインに対してそんなことはできない。
なぜなら、彼は子供の姿になってしまっているからだ。
「すぺい、」
「な?」
なにが、な?なのかわからない。
どうして小さな姿になってしまったのかわからない。いや、原因はわかっている。
確実に海を隔てた眉毛の立派な自称紳士の国だ。彼のふざけた、あの天使だとかなんとかいう奴の奇跡だろう。
こんなはた迷惑な奇跡があってたまるものか、と叫びたい。
そして、これほど多大な迷惑を被っていると言うのに、スペインはあまり気にしていないようだ。
「もとに戻りたくないのかよ…」
「戻りたいけど、アイツに頭下げるのが癪や」
「癪って…お前なぁ…」
「それに、」
すっと細められた新緑の瞳。健康そうな血色の良い小さな手は白い首筋を撫でる。
「ふぁ、」
「今は、こっちのほうが気になるわ」
ちゅ、と鎖骨の辺りに口づけられる。プロイセンはびくり、と体が跳ねる。
唇は上へ上へと移動し、プロイセンの唇に口づける。
「んぅ…ぁ、ふぅ…っ」
小さな体に押し倒され、キスをされる。
子供のするような触れるだけのキスではない。その見た目との差にプロイセンの頭はくらくらする。
背徳感がひどい。自分が襲われているのに、まるで自分が悪いみたいだ。
思わず瞳を閉じて、スペインから目をそらす。
「ほんま、ギルちゃんはかわええな」
「っ…」
「子供に押し倒されて」
「ぁっ…」
「ぞくぞくしてるんやろ?」
「ちが、」
「ちがわんやろ?」
鋭く輝く瞳にさらされ、プロイセンは、熱い息が漏れる。
子供の姿をしていてもその瞳の輝きは変わらず、鋭く突き刺さる。
ぞくり、と粟立つ背筋。
「キスだけじゃ、足りないやろ?」
なぁ?と耳を舐められる。
「ふぁ…っ」
彼の太陽の輝きを宿した、強い瞳に焦がされてしまいたい。
そう思ってしまった時点でもう
「ええやろ?」
答えは決まっていたようなものだ。
【太陽に焦がれる】
End