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【DRRR】1番印象深い、第一印象【静帝】

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静⇒帝

》1番印象深い、第一印象


「どうしたー?静雄ー。えらくぼんやりしてるじゃねーか」
「…え、そっスか?すんません」

 自覚はあった。
 確か自分は朝からずっとぼんやりとしている。いや、正確には昨日の晩からだと思う。
 昨夜は腐れ縁の医者のアパートで鍋をするから集まれって言うんで、俺も邪魔していた。
 わりに気の合うセルティや、昔の同級生のツレ、あとセルティが連れて来たガキとか何か白人とかがわんさかいたと思う。
 結構騒がしかったし、何かしら裏があったんだろうな、と思わせる奇妙なメンツで、特に知り合いでもねーヤツが混じっていたが、俺は結構楽しんだ。
 何度か意味のわかんねー騒がしさにイラついたり、あの気持ち悪い医者に怒鳴りかけたり、…いや、1発だけ殴ったか、…というぐらいの起伏はあったんだが…。

「俺、キレなかったんスよ」
「あー、お前がキレなかった?…それで考え込んでんの?」
「はい。俺、あんなふうに何人かで鍋囲んで食うなんて、ほとんどしたこと無いんスけど。何か」
「そっか。どんなふうだったかはわかんないが、今までのお前なら絶対キレてた場面でキレなかったわけだ」

 トム先輩は冷静に言い直してから、「そりゃスゴイわ」と笑った。
 この人は俺の扱い方を知ってる、なんてよく言われてるらしいが、確かに長いこと俺の世話を焼いてくれて俺が何にイラつくのか、とかどこまでならいいのか、とかよく分かってくれてるんだと思う。
 それはまぁ、この人だからだと思うし、感謝している。この人に対してキレることはない。
 けど昨日は、実際俺の知り合いだったのは2人だけだった。
 それでも、楽しかったし、キレなかった。
 壊した物もたぶんなかったと思う。

「んで、何でだったのか考えてんのけ?」
「そっス」

 そこに行くまでに特別機嫌が良かった記憶はないし、門田のツレの妙な2人組にいろいろと面倒くさいことを言われた覚えもある。新羅と同じく白衣を着た白人の女がやたらに近づいてきて、セルティが止めていて面倒だったことも覚えてる。
 普段なら机の1つや2つ投げ飛ばしていてもおかしくはなかった。
 それなのに、キレなかっただけではなく、楽しかった気がするのは何なのか。
 考えるほどにわかんなくなって来て、いい加減イライラしてきたので、考えるのを止めようかという時だった。トムさんがふいに思い出したように言う。

「1番印象に残ってるのを思い出したら、整理つくんじゃねーの?」
「印象?…わかんねーんスけど」
「そーかー、じゃあとりあえず、今日の昼飯に何食うか考えてみ」

 トムさんが言うなら何か方法があるんだろう。
 昼…、昨日はケンタに行って、今朝は朝マックだった。米が食いたくなるな。吉牛はどうだろう。

「静雄、昼何がいい?」
「吉牛とかどうっスか」
「おー、俺もそろそろ和食がいいな、と思ってたのよ。ほんで、昨日の鍋パーティー何があったの?」
「昨日っスか?昨日は新羅とセルティん家で鍋食って、…そこに…」

 そこに、小動物が2匹いた。

 あ、コレか。

「…何か出た?答えっぽいの」
「さすがっスね、トムさん」
「褒めても何にも出ねーべ。何、何かいい女でもいたの?」

 女。いや、女もいたが、男もいた。
 両方、たしか来神高校の後釜になった来良学園の生徒だと言っていたと思う。
 2人とも名乗っていたし、周りに名前を呼ばれていたはずだが、あまり覚えていない。女の方に至ってはずっとうつむきがちで、たまに目が合うと素早く反らされていたから顔も覚えてない。でもたしかに見覚えはあった気がしていたし、そんな反応は街中にいれば日常の光景なので、イライラすることもなかった。
 男の方は…。

「どーも変わったヤツがいたんスよ。真っ直ぐに俺の目を見て笑いかけて来る、小動物みたいなのが」

 何となく聞き流してくれているトムさんは、ここで突っ込んで詳しく聞いて来たりしなかった。いまだ頭の中の整理中の俺にはありがたいリズムだ。

 それは、まだ中学生でも通りそうな幼い顔をした少年だった。世間ズレしてないような雰囲気が全身からしていて、それでいてあの奇妙な空間に溶け込んでいるのだから不思議なものだ。
 俺が部屋に入って行った時に、初めて目が合った瞬間に、あのデカイ黒目がこぼれそうなほどに見開かれて、口をちょっと開けたまま驚いた顔で止まっていた。しかし次の瞬間には満面の笑みを浮かべて「こんばんわ」と話しかけてきた。
 セルティが自分から連れて来たヤツなんだから、何かしら変わってるんだろうが…。
 あんなに真っ直ぐに、俺に、平和島静雄に柔らかな笑顔を向けるヤツは今のところ誰もいなかった。しかも俺が力をどんなふうに使うかも知っていて、だ。

「俺、たぶんアイツがいる前で暴れたことあるんスよ。何かそんなよーなこと言ってたんで」
「うんうん」
「それなのに、アイツはビビったり引いたり、無理やり愛想良くしたりするんじゃなくて、何つかその」
「あこがれ?」
「あ、それに近いんスかね。嬉しそうに笑うんスよ」

 トムさんが新しい煙草をふかしながら「そうかそうか」と笑っていて、何となく子供の頃に学校であった話を親に話しているような感覚がした。ほんのちょっとだけイラつきが溜まりかけて、それを上手く解消させてくれていた、あの笑顔を思い出す。
 そういえば、あの妙な2人組に絡まれたときには、そっと会話に混ざってきて、自然に話の流れを自分に持っていって、関心を俺からずらしていた気がする。
 新羅の馬鹿が好き勝手に意味のわかんねー言葉を並べて話し始めた時にも、血管がぶちキレる音がする前に、鍋を食べている少年から声をかけられて、結局デコピンだけ食らわせてすぐに席に戻った。
 上手いこと、俺がキレる前に対処してたのか?
 初めて会ったようなガキに?
 何となく腑に落ちないが、それでもあの無邪気なぐらいに雄弁で素直な笑顔を思い出すと、心臓の下のあたりがぬくくなっていく気がする。
 あいつは元々、そういう性格なのかも知れない。

「へー、俺も会ってみたいもんだねー、その子に」

 トムさんが次の回収先のアパートに足を踏み入れながら言った言葉に、俺も無言でうなづいた。

 もう1度会いたい。
 そしたら今度は名前をちゃんと聞いて、食事にでも誘おう。
 鍋をすげぇ旨そうに、頬張りながら一生懸命に食っていた姿を思い出して、固まっていた顔が緩んでいく感覚がしていた。