【APH】俺が女になった日【ギルエリ】
その姿を確認して、アイツの場所へと向かう。
整備されていない獣道を急ぎ足で進むにはスカートは邪魔くさくて、裾をたくって歩く。
しばらく進むと少し開けた場所へ出て、そこには見覚えのある銀髪が転がっていた。
「…何やってんだよ。」
そう上から声をかけると、紅い瞳がゆっくりと現れる。
「…何だよ、その格好。」
「ああ、これか…?」
身につけたロングスカートをちょっとつまむ。
「今日から俺は女になった。」
「…似合わねぇな。」
「うるせぇ…。」
もうずっとずっと、男として生きてきた。
今さら「女だ」なんて言われたところで、「ハイ、そうですか」なんてすぐに受け入れることは出来なかった。
「なあ、プロイセン…」
プロイセンの頭の近くにドサッと乱暴に座って、上から覗きこむ。
「プロイセン、これがハンガリーなのか?これが俺なのか?」
彼はもうずっと前から知っていたんだろう。
ひょっとすると、自分で気付くよりも前から…
「教えてくれよ、なぁ。」
だんだんと目の前が霞んでいく。
「ずっとずっと、胸のどっかが痛いんだ。」
まばたきをすると、涙がこぼれ落ちて、プロイセンの頬を濡らす。
「分からないんだ…どうすればいいのか。怖いんだ。みんなはどんどん体も大きくなって、力も強くなって…なのに俺は…!」
止めようとしても止まらない涙の筋を、なぞるようにぬぐわれる。
その手はやはり自分の手とは違った。
やはり、自分は女で、こいつは男なのだ。
「…なんだよ、いつものお前らしくねぇな。きもちわりぃ。」
「そのままそっくりお前に返すぜ。女みたいに泣きやがって。」
ヤツがニヤリと笑ったのにつられて、自然と口角が上がったのを感じた。
「いいじゃねぇか、何だって。お前はお前だろ。男だからとか女だからとか気にする必要はねえよ。」
「…そうだな。」
不思議と、胸の痛みが和らいだ気がした。
【終】
作品名:【APH】俺が女になった日【ギルエリ】 作家名:千草