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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】瞬

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「見つからないなあ」
 ケーシィを探して203番道路に入り浸りもう1週間が過ぎようとしていた。
 「クイックボールをきょうは持ってきたのに」
 ケーシィというのは見つけても喜ぶことはできない。もたもたしているとすぐに逃げてしまう。テレポートで緊急回避をするのがケーシィの特徴なのだ。本来ならポケモンを見つけたらすぐ捕獲、というのはナンセンスではあるが、ケーシィを弱らせるにはテクニックが必要である。蜘蛛の巣や黒い眼差し、あるいは蟻地獄や影踏みといった技や特性で相手を足止めする必要が出てくるのだ。もちろんそんな高度なテクニックをするにはまずそういうことができるポケモンをつれていかねばならない。ならば多少のリスクは見越しても素早くボールを投げるというのもある意味有効であろう、というわけである。
 そういったことにクイックボールは大変有効である。すぐ逃げてしまうようなポケモンを捕まえるという局面でこのボールは真価を発揮する。出会い頭ですぐ投げることによる動揺をうまく使って捕獲するボールなのだ。
 ただ、残念なことがある。これは対象となる目的が現れないことには全く用をなさない、という前提がある・・・。
 
 「はあ…」
 少女サユリはクロガネゲート付近で息をつく。ミニスカートからのぞく足を草は容赦なくひっかく。季節は夏。全国でも北の方にあるこの地方でも、夏になればじっとりと暑い。
 「きょうは引き上げようかな」
 熱中症という一連の症状(日射病や熱射病のほか、急性熱射病など)が話題になる昨今である。昼のこの時間帯は彼女にとってはきつい。
 引き上げようとした矢先に、黄色いポケモンがうごめくのを見た。彼女はかけよりクイックボールを投げる。そして…。

 そこで彼女の意識は途切れる。

 #

 「…」
 「よかった、気がついたんだね」
 目の前に顔見知りのトレーナーがいた。
 「ヒカリちゃん」
 「お久しぶり。もうほんとにびっくりしたよ」
 「…?」
 「私が通りかかったらサユリちゃんが倒れてたの。いそいで周りにいたトレーナーを呼んでコトブキまでつれてきて」
 「…」
 医者からも見かけたヒカリちゃんからも熱中症そのものだと言われた。引き上げ際になるとは誰も予測していなかった。
 「あ、そうだこれ拾ったんだけど、サユリちゃんのでしょ」
 「…どれ?」
 「これこれ」
 見せられたのは青い球体。クイックボールだった。カタカタ動いている。
 「すごいね、ケーシィを一瞬で捕まえるなんて。私にはできなかったもん」
 彼女に言われてようやくサユリは事態が飲み込めた。
 「…ずっと粘ってたからね」
 「それほどほしかったの?」
 「だって私だって強いトレーナーになりたいもの。トレーナーである以上は」
 ヒカリちゃんのように、とは付け加えないでおいた。かつては自分と同じくらいの強さだった彼女が、今やシンオウチャンピオンを倒した少女なのだから、成長度はあまりの差がありすぎると言わざるを得ない。
 「それにしても、まさか倒れるとは思わなかったなあ…今後は気をつけないと」
 「そうだね…もしパーティがそろったら連絡してよ。戦いたいな」
 「かなうかなヒカリちゃんに…一方的にやられそう」
 彼女は夕日の射す病室でニコッと笑った。