【完全読み切り】鳳
「ヒビキ殿」
「どうしたのさホーちゃん」
まさかちゃん付けで呼ばれたりするとは夢にも思わなかった。今の主人の恋の対象がつけた渾名である。
今の主人は13歳の少年である。
虹翅ヒビキ。ワカバタウンという田舎町の出身である。
♯
彼が鳳凰−ホウオウ−の名前を持つそのポケモンを何故従えられるのか。
そこには、血統の正統性と、心の潔白が必要となる。彼は、知り得なかったことだったが、彼こそは正統なるホウオウの主人の後継者なのだ。
透明な鈴と虹色の羽を手に入れて修行僧に見せると、修行僧は彼の手に羽がある時だけ、虹色の光が強くなるのを見つけたのだ。
しかし、それだけでは不十分であった。
彼の父親も血統の正統性が保証されているというのに、彼から奪った羽と鈴ではホウオウは認めなかったのだ。
「巨悪に魂を売り払った者に我は従いたくあらぬ故」
♯
「空の旅は楽しんでおられるか?」
「うん」
「ならば光栄」
下界でライコウ、エンテイ、スイクンの三匹も駆ける。
ホウオウはふと、最初に仕えた主人を思い出した。
「血は争えないものよ…」