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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】厳

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「ふぅ」
 彼とずっと会っていなかったことは、こちら側にだけでなく、少なからず相手にも影響を与えていたようである。
 「もういいよ」
 私は彼の心が痛いほどわかり、また彼の心と態度が正反対であることにとうに気づいていた。
 「ずっと・・・こうやってきたんだね」
 彼は仲間を集めるなり、この世の悪事組織ロケット団が復活したのを、それまた再び鎮静化しようと試みた。そのとき彼は、誰にも言わなかった。自分がそのような危険なことを、これまでとは違う仲間たちとともに行うことを。それは、ひとえに彼のプライドと思いやりの合わさった物だったのだろう。ライバル・グリーンに頼むわけにはいかなかったし、かといって私を戦場にかり出すのは気が引けたという事。別に私は気になどしないのに。彼はそういう人間だった。昔から、ずっと思いやるだけ思いやって、自分だけ傷ついて・・・。
 彼は新たな仲間を、しかも他地方に求めたのである。まずホウエン地方に向かい、そこで初めての仲間を作ると、彼とともにジョウト地方へ行き、そこでまた別の少年と仲間になる。そうして、シンオウ地方、イッシュ地方と転々と渡り歩いたのだった。
 レッド。彼はすでに子供ではなくなっていた。熱血と冷静というおよそそぐわない性格をうまくミクスチャーさせようとして、かえって不安定になってしまったのだ。
 「レッド」
 私が呼びかけても、何の返事もない。彼はもう言葉を失った人形のようになっていた。チーム・リーダーとしてしっかりしなくてはならない、そしてロケット団を壊滅に追い込まなくてはいけない、そんな情念に刈られ、そして束縛された、悲しい姿があった。
 
 「もう・・・戻ってきて」
 「・・・」
 やはりというべきか、戻る気はなかったようだ。チームを自分で作った故の責任もあるだろう。
 しかしもはやチームメンバーはチームメンバーで内側から崩壊しそうな面足りティーになりつつある。レッドのために、また自分の好きな人のために、その他多くの人のために尽くそうとするあまり、彼らは皆崩壊しだしている。そして自己嫌悪に陥りやすくなっているのだ。レッド以外のメンバーと彼が交流することはあるらしいが、もはやそんなので寂しさを紛らわすことができないほど接点も薄くなっている。敵も絶えず動き続けているのだ。そもそも交流というのは互いに心に余裕があって初めて成り立つものだ。今の彼らではそれはとうてい望めるはずもない。
 「おいでってば」
 私は両手を広げて彼に向ける。彼は全くみてくれる気配がない。彼は自分だけ幸せになるつもりはない。だからメンバーに遠慮しているのかもしれない。
 しかしだからこそ私もまた、彼のチームメンバーと、かつて交際のあった女の子たちに会いに行ったのだ。遠く遠く離れた地方で、それこそ彼女たちの中にはその処遇に不平こそ持っている子もいた。私だってかつてはそうだったし無理もないだろう。だが、彼女たちにも、やはり事柄は理解できた。そうして、やっとここまで持ってこれた。
 「なにが問題なの?」
 「・・・」
 彼はやっぱり答えてくれない。涙があふれでてくる。彼はこんな姿を見てどう想うのだろうか。私は、一念発起した。

 「うりゃっ」
 「!」
 こうするしか、なかったよね。あなたの方からくるのは抵抗があったでしょう。私の方から、こうやって迎えてあげるべきだったんだ・・・。