この物語は悲劇だった
「臨也さんは特別な人間ですよ」
狭いベッドで2人で横になっている時に、突然彼はそう言った。
「突然どうしたの?」
「物語の主人公はどんな窮地に陥っても、生還できるでしょう?」
暗がりに彼の顔を見つめると、彼は穏やかに笑っていた。
「だから、この戦場でも臨也さんはきっと生き残れますよ。」
ある種の達観を含んだそれは彼の年齢には不釣り合いで、俺は彼のこの表情を見ると妙にドキリとしてしまう。どこか危うく感じるのだ。
「だったら帝人君だって生き残れるよ。だって特別な俺の恋人なんだもの!」
「…そうでしょうか?」
微かに悲しみを含んだ瞳に見つめられて、俺は彼を抱き寄せて必要以上に明るく言った。
「当然でしょ?この戦いが終わったら俺は君の待つ家に帰るのを仕事にするんだから!」
「…なんですかそれ」
俺の腕の中で彼がクスクスと笑う。彼に触れたところから彼の温度や鼓動が伝わってくる。
「それ死亡フラグっていうんですよ?」
「大丈夫だよ。俺は特別な人間なんでしょう?」
俺がおでこに口付けてそう言うと、彼は年相応に笑った。
うん、やっぱり俺はこっちの顔の方が好きだ。
作品名:この物語は悲劇だった 作家名:南天こった