この物語は悲劇だった
ほんの少しの間だった。
任務でほんの少し彼の元を離れた間に彼の守っていた場所は木っ端微塵に吹き飛ばされた。
それはそれは大きな爆発で、その場所にあったはずのものは何一つとして残らなかった。
モノも人も…もちろん彼も。
俺の特別だったぐらいでは彼は生き残れなかった。
では、誰の特別であったなら彼は生き残れたのだろうか?
そして俺がもし、彼がいうようにその誰かの特別であるとするならば、この戦いではどうしたって彼の元には行けないのだ。
「…帝人君」
呼び掛けてみたところで昨日まで隣にあったはずの温もりはどこにもない。
「…っ…みかどくん…!」
俺は人を愛していた、人間全てを愛していた。
その中でも特別だった彼はやっぱり普通の人間で
特別だとはいえ俺もやっぱりだだの人間で
この戦場で、他の人間の中に埋もれた彼の骨ひとつ見つけられやしないのだ…
作品名:この物語は悲劇だった 作家名:南天こった