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えむえむ@ヨイチ
えむえむ@ヨイチ
novelistID. 13061
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束縛したがり×されたがり

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とあるマンションの一室。
臨也は鼻歌を歌いながら、鍋の中でコトコトと音を立てるカレーをかき混ぜる。おたまに少しカレーをすくうと、息を吹きかけて冷ましてから口に運ぶ。

「うん、上出来」

顔をほころばせて、臨也はコンロの火を止めると、鍋に蓋を下ろした。

「カレーだけじゃさみしいかなー」

独り言を言うと、冷蔵庫の野菜室を開く。レタスと胡瓜、トマトを取り出し、洗ってしまっておいたまな板と包丁を取り出した。
鼻歌を再開して、手際良く野菜を切っていく。手慣れた様子が見えたが、実際臨也の手料理のレパートリーは少なく、今作っているカレーのほかはパスタが二、三種、後はみそ汁と卵料理くらいだった。

「今日は食べてくれるといいなー・・・」

少し切なげな表情を作ると、ちぎったレタスをざるに入れ、それに小口切りにした胡瓜を混ぜて冷水にさらし、サラダボウルに盛り付ける。皿のふちにきれいにトマトを盛り付けると、切なげな表情から一転、満足げに鼻から息を吐く。綺麗な出来栄えのサラダだった。
それを、ダイニングのディナーテーブルへ運ぶ。その時、上機嫌な臨也の足元で、金属がこすれる音を立てる。


臨也の足は、太い鎖のついた足枷で、重々しく繋がれていた。


鎖の先端は、壁に深く刺さった、輪っかのついている鉄製の楔に繋がっている。鎖の長さは、家の中を歩き回れる程度。家の中には固定電話もパソコンもなく、臨也の携帯はもちろんその部屋に連れてこられたその日に取り上げられている。臨也は帝人に、これ以上ないほど束縛されていた。
しかしリビングには帝人が用意した薄型の大型テレビとDVDプレイヤーが存在感たっぷりに鎮座し、テレビの脇の棚にはDVDがたくさん収まっている。退屈させまいとする心遣いを喜ぶと、帝人は笑顔で「精神を病んで死なれても困りますからね。あなたは私のモノですから」とのたまった。

「早く帰ってこないかなー」

ディナーテーブルの椅子に腰かけ、机に突っ伏すと、嵌め殺しの窓からすっかり暗くなった外を見る。
そろそろだ。
そろそろ帝人が帰ってくる時間だった。

その時、がちゃりと玄関のかぎを開ける音が聞こえた。

臨也はがばりと上半身を起こす。がちゃり、がちゃりと、二個目三個目を解錠する音が聞こえる。玄関まで行くのもどこか恥ずかしい気がして、臨也はそのままそわそわと、帝人がダイニングまでくるのを待つ。
玄関が開く音に続いて、鍵を掛け直す音が響く。その音を聞くたびに、臨也は歓喜に震える。

最初はもちろん、束縛されることへの抵抗は強かった。全力で抵抗し、帝人の冷やかな笑顔を睨みつけた。
しかし臨也が反抗するほど、帝人の暴力はひどくなった。服をはぎ取られ身動きできないほどきつく体中を縛られ、後ろの穴にバイブを突っ込まれたまま半日放置されたこともあった。
そんな暴行に、甘さを感じるようになったのはいつだろう。
臨也が廃人寸前までいったときには、帝人は優しく抱きしめ口にスープやおかゆを流し込み、風呂に入れてくれた。「死にたい」と言ったときには、自分も死にそうな表情になって抱きしめてくれた。
もう遅かった。
気付いた時には臨也は帝人を愛していて、束縛されることに喜びを見出していた。



「ただいま、臨也さん」

帝人が顔を出したのを見て、臨也は顔をほころばせる。

「おかえり。カレー、作ったんだ」

臨也はカレーをよそおうと椅子から立ち上がりかけた。が、それは帝人が臨也の両肩に置いた両手によって阻まれ、臨也は椅子に戻される。

「・・・臨也さん、僕言いましたよね?」

そのまま臨也の後ろを通りキッチンへ入ると、帝人はカレーの入った鍋を持ち上げる。

「僕は臨也さんの作った料理は、絶対に食べませんから」

そしてその鍋をシンクに持っていき、中身をぶちまける。独特のにおいと湯気を漂わせて、カレーは排水溝に流れていった。

「僕は臨也さんが僕を愛してることを信じていません。それこそ殺されてもおかしくないような仕打ちをずっと臨也さんにしてきたわけですから、臨也さんの作った料理なんて怖くて食べれないんです」

そこまで言うと、帝人はダイニングの臨也に振り返った。
臨也は、ぼろぼろと涙をこぼして泣いていた。

「・・・泣かないでください」

それでも、臨也の涙は止まらない。臨也は帝人の言うことが聞けなかったとき起こる様々な事象を思い出して鳥肌を立てた。目元を何度も何度もぬぐって何とか涙がこぼれるのを止めようとしても、それは洪水のように後から後から出てきて止まらなかった。

「ごめ、ごめん、帝人君、止まらな、い。ごめんなさい」

カタカタと臨也の体が震えた。そんな臨也に、帝人は一歩一歩ゆっくりと近づいていく。ひ、と臨也は喉を鳴らした。

「やだ、いやだ、怒らないでごめんなさいっ、ごめんなさっ」

ついに、臨也の目の前に帝人は到達する。恐怖から帝人の顔を見ることができずに、臨也は顔を覆って体を震わせる。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ、っひ」

臨也の言葉が、中途半端に切れた。


臨也はすっぽりと、帝人に抱きしめられていた。


「臨也さん、ごめんね」

「み、かどく、ん・・・」

「食べたいのは山々なんですよ。でも、僕は死ぬわけにはいかない。死ぬかもしれないリスクを冒すことはできないんです。僕がいなくなったら、ダラーズは、池袋は、どうなってしまうかわからない」

「っう・・・」

「臨也さん、愛してますよ」

「う、ん」

帝人の体温に、臨也の涙はゆっくりと引いていった。

「愛してます、臨也さん」

しかし、臨也は知らない。
この部屋の中は死角などないほどの隠しカメラに覆われていて、帝人はいつでも臨也の行動を把握しているということを。そのため、臨也が料理の中に毒など仕込んでいないと知っているということを。

臨也を抱きしめる手にさらに力を込めて、帝人は、にやりと笑った。



―――ああ、本当に、この人の泣き顔は堪らない。