刻ハ止マル
「コウモリ」
「なんでございましょう」
「私は餓えている」
「お食事をご用意いたしましょうか」
「いや」
我が主はまた失望以上に酷薄な、小さな小さな希望を押し込めた瞳を窓の外に向けました。
彼の瞳に映る光など、闇を孕む月の光だけで十分なのに。
「Gunter…」
彼の美しい唇は待ち人の名を紡ぎます。
気まぐれに命の盟約を結んだ、遥か過去の友。
永遠に過ぎゆく時刻の中で、唯一我が主の心を揺り動かす者でございます。
彼は我が主を昏い歓びで満たすことができますでしょうか?
いや、きっとできないだろうとわたくしは思います。
何故ならば、彼が我が主との約束を果たそうと思うのならば、とっくに姿を現しているはずですから。
しかしどちらにせよ我が主の嘆息と苦悩が終わることはないでしょう。
彼はギュンター様を目前にした時、新たな苦しみの薔薇が心に咲いたことに初めて気付くのです。
果たしてエクトール様はギュンター様の命を奪うことができますでしょうか?
真に命のなんたるかを知ったギュンター様のお美しい姿は、きっと我が主だけでなく、私をも魅了することでしょう。
そして我が主はその紅い瞳に過去を映し出すに違いありません。
彼と共に永遠の命を求めた日々を…。
エコ。
もし永久に生きることができるのならば。
僕と共に生――-