恋人が胸を触らせてくれません
「ダメ! お願いだからダメ!」
ベッドの上で頑なに拒否をするのは俺の可愛い彼女。
何故、彼女はそこまで思い詰めるのか、おさらいと探りをしてみよう。
バイト先で出会い、偶然か必然か、俺は彼女の男性恐怖症治療の担当に抜擢されました。
そこから紆余曲折があって男性やスキンシップに耐性が出来、いつのまにか付き合うようになりました。
余談ですが、彼女は俺が彼女の父親に説教をした時に惚れたらしいです。
俺ですか? 俺は、彼女が自分以外の男と楽しそうにしているのを見て心がモヤモヤしたのが今思えば初めだったのかも知れません。
そんな俺達ですが問題が出てきたのです。
俺だって若い男です。
彼女はよく分かりませんが、恋愛小説などを読んでいる為か、はたまた、スキンシップが出来るようになった為か、興味はあるみたいです。
そろそろ先に進んでも良い頃かなと思い、思い切って切り出してみました。
「まひるさん。いい……ですか?」
「うん……宗太君なら」
念の為に言っておきますが、何でもない時にいきなり切り出したわけではないですよ?
部屋に二人きりで『そういった雰囲気』になった時です。
そこからは緊張しっぱなしです。
キスは自分で言うのも何ですがよくしていますし、問題はさほどありません。
キスまでで止まるという暗黙の了解を打ち破る、この一点のみです。
キスが終わると次は? 経験が皆無の俺には難しいところです。
服を脱がすのか? もう一回キスなのか? 言葉を掛けるのか?
悩んだ結果、胸を触ってみる事にしてみました。
ですがそれは地雷だったのです。
「ちょ、ちょっと待って!」
「変な事してしまいましたか?」
「違うの! あの、その……」
「笑わないですよ」
「恥ずかしいの……胸が、その……」
これには焦りました。
しかし、こういう時にはまずは安心させる事が大事です。
俺は俺自身の考えと想いを伝えました。
「何を言っているんですかまひるさん。俺は胸なんて気にしません。まひるさんが好きなんです」
「宗太君が気にしなくても私は気にするの!」
「や、あの、まひる、さん?」
「私は小さいんじゃなくて、ない、の!」
「あのー……」
「友達にパッドをプレゼントされて馬鹿にしつつも着けてみたら意外に良くて悦に浸っていたら、部屋に入ってきたお母さんに見抜かれて心配されるような女なの!」
何かとんでもない話を聞かされたような……でもそこまで思い詰めていたのですね……
俺は男なのでよく分からないですけど、身長みたいなものなのでしょうか?
「大丈夫ですよまひるさん。だから落ち着いて……」
「なずなちゃんにパジャマを借りる時だっていつもいつも胸周りが……小学生に負けて……ひくっ、ううぅう」
遂に泣き出してしまいましたが、恐らくここら辺で冒頭に戻るくらいです。
俺には彼女のコンプレックスにしてやれる事もなく、掛けてやれる言葉もなく、そのまま続けられる雰囲気でもなく。
この日は泣き出した彼女の頭を撫でてあげながら抱き締め合って横になりました。
腕の中で泣き疲れて眠る彼女を見ていると、とても残酷な事をしてしまったようで罪悪感でいっぱいです。
これからどうすれば良いですか?
まさかこのままずっとお預けですか?
それともコンプレックスを二人で乗り越えられる日がいつか来るのですか?
触るだけでこれですから、服を脱がせた日には一体どうなってしまうのですか?
彼女は好きです。
寝顔を見ていると罪悪感以上に劣情を持て余して、胸どころかどこもかしこも触りたい気分です。
彼女を傷つけずに最後までするにはどうすれば良いですか?
誰か御教授をお願いします。
作品名:恋人が胸を触らせてくれません 作家名:ひさと翼