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青白く光り輝く三日月の夜。
日本のとある町の片隅にある平屋の家の縁側に、男の影が2つ。
月明かりに照らされたその二人は、寄り添いながら空を見上げる。
「日本の空は、星があんまり見えねぇなぁ」
月明かりにその銀糸の髪を綺麗に照らされながら、ギルベルト・バイルシュミット はポツリと呟く。
「仕方ありませんよ、狭い島国です。
 星の光が、皆さんが出す蛍光灯の光に負けてしまっているんですから。」
見上げながら、本田菊は寂しそうにそう呟く。
「星がみてぇから、全部消せよとはいえねぇしな、ケセセ」
そう笑うと、ギルはごろんと菊の膝に寝転び、菊を見上げるとにっこりと笑った。
「そうですねぇ・・・。
 山に行けばそれなりに見えるとは思うんですが・・・、ああ、それよりも、師匠の所の方が星は綺麗に見えるんじゃないですか?」
眼下のギルベルトを見下ろすと、にっこりと菊は微笑むと、ギルベルトはそっと菊の頬に触れる。
「じゃ、今度、お前が見に来いよ。
 ってか、ソレよりも・・・。」
そう言いかけて、ギルベルトは深紅の瞳で菊を見つめ、頬を撫でる。
「なんですか?」
撫でられた事が嬉しいのか、そう答えつつも菊はそっと目を閉じ、されるがままにされていた。
「二人きりのときは、名前で呼べって言っただろ。
 いい加減直せよ。」
頬に手を置いたまま、ギルベルトは菊を見つめたまま彼の出方を待つ。
「ふふ、昔からの癖がなかなか抜けませんね。
 すみません。」
笑いながら、嬉しそうに菊はギルベルトの頬に触れる。
期待していた言葉とは違うが、まぁいいかと心の中で自己完結したギルベルトは、菊を見上げたまま、その黒い髪に触れた。
「月がきれいですね。」
ポツリと言うと、眼下のギルベルトに優しげに笑いながら、菊はギルベルトの髪に触れる。
それにギルベルトは、ケセセと笑うと、身体を起こし菊を引き寄せると、自分の膝に横向きに座らせた。
「なんですか、いったい。」
笑いながら菊は抵抗することもなく、されるがままギルに問いかける。
「俺様がお前を抱っこしたかっただけだぜ、ケセセ」
そういうと、ギルベルトは菊の頬に優しく触れ、コツリと菊の額と自分の額を合わせ、じっと見つめた。
「近いですよ。」
笑いながら、菊もじっとギルベルトの眼を見る。
それに満足そうに微笑むと、ギルベルトは頬に触れながら、空いた手を菊の手に絡めた。
「俺様もお前が好きだぜ、菊。」
ギルベルトがそう言うと、たちまち菊の顔が赤くなる。
俯きたくても、ギルベルトの額が邪魔をして出来ずにいた。
「・・・ご存知だったんですか、あの意味。」
真っ赤になりながら、菊はギルベルトを睨みつける。
「ケセセ、俺様に知らねぇことなんてねぇよ。」
そう言って笑うと、ギルベルトは菊の頬に口付けた。
菊は何もいえず、赤面したままギルベルトにされるがまま。
「なぁ、菊。
 俺様、欲張りだからよぉ、好きだけじゃたんねぇんだ。
 だから、愛してるって言ってくれよ。」
少し真剣な眼差しで菊を見つめると、ギルベルトは菊の額に口付ける。
「Gilbert, ich liebe(ギルベルト、愛してます。)
 Sie mussen nur besser als alle anderen(他の誰よりも貴方だけを)」
恥ずかしそうに菊がそう言うと、まさか母国語で言われると思っていなかったギルベルトはびっくりした。
それでも嬉しそうに、菊の頬に口付けるとギルベルトは菊に微笑む。
「俺様も、愛してるぜ、菊。
 ヴェストよりも誰よりも、俺にはお前だけだ。」
そう言いながら、ギルベルトは菊の唇を指でなぞると、その唇に軽く口付ける。
菊はそれに一瞬びっくりしたが、嬉しそうに受け入れた。
「続きは、部屋に戻ってからな。」
にっこり笑いながら、菊にそう言うと、菊は笑った。
「身体・・・もちますかねぇ。」
笑いながら菊がそう言うと、ギルベルトも釣られて笑う。
「でも、月もお前も綺麗だから、もう少しこのままでいようぜ。」
そう菊に言うと、菊は恥ずかしさからギルベルトの胸に顔を埋めると、そんな菊を見て、ギルベルトはケセセと笑った。
『本当は、月よりもお前の方が綺麗だなんて、恥ずかしくて言えるかよ。』
そう思いながら、ギルベルトは菊を抱きしめると、菊もきつく抱きついてきた。
それに二人は顔を見合わせて笑うと、また夜空の月を眺めた。
この幸せが永遠に続けばいいと願いながら・・・。



作品名:Monat 作家名:狐崎 樹音