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七瀬りおん
七瀬りおん
novelistID. 11757
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かっこわるいところも含めて、愛してる。なんて言えないけれど

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時計の短針が10を指した。
約束の時間ぴったりに現れた恋人に見惚れる。
普段の制服とは違い、私服。それは当然だ、今日は休日で、デートなのだから。
「アーサー、待ったか?」
「いや、全然待ってないから、気にするな」
実は30分くらい前からいた。英国紳士たるもの恋人を待たせるわけにはいかない、という気持ちと一分でも一秒でも早く会いたいという気持ちを抑えきれなかったのだ。
まあ、恋人は大変ドイツ人らしく、時間ぴったりに現れたわけだが。
「アーサー…シャツ裏返しで着てるぞ…」
「え?」
上からはおっていたシャツを指差される。
よく見ると確かに裏返しで来ていた。パッと見ただけではわからないが、近くに行くと縫い目が見えるのでよくわかる。
この状態で自分はここまで来たのか、と思うとアーサーは今すぐにでも穴に埋まりたいと思った。
「あ、あああ」
「とりあえず、直せよー」
ああ、恥ずかしい。本当に恥ずかしすぎて、顔から火が出そうだ。
「ケセ、まぬけだなー…」
呆れたような笑みを浮かべるギルベルトにショックが隠せない。
「ま、気にするなよー」
ぽんぽん、とアーサーの肩をたたくギルベルト。
初めてのデートなのだから、かっこつけたかったのに…。がっくりと肩を落として、ため息をついてしまう。
だが、まだデートは始まったばかりなのだから、これから挽回して行けばいい。
そう思い、アーサーは立ち直ることに成功する。
「と、とりあえず、行こうぜ」
「おお」
にこっと笑う恋人の眩しい笑顔に顔が赤くなってしまう。
すると、手を取られる。
手を見てみるとギルベルトの白い手が自分の手を掴んでいた。
「は、はぐれないように、手つないでいいか?」
耳を赤く染めて、アーサーに恐る恐る尋ねるギルベルト。もう、それだけでいろいろなものがぐらぐらと揺れる。
「あ、ああ…」

定番のデートコースとも言えるような映画を見る。
見るつもりだった。
恋愛もの、だとあまりにもそれっぽすぎるし、きっとギルベルトも飽きてしまうだろうから、ということで二人で楽しめるアクション映画を観たのだが。
映画を観終わって、学生が入れるくらいの値段設定されているファミレスにやってきている。
「あー、そのあんまり気にするなよ」
「……」
「映画館って暗いし、動けないから眠くなったりするのは仕方ないしよ」
失態だ。まさか、眠ってしまうなんて。
確かに前日はデートのことを考えてよく眠れなかったし、眠れてもすぐに目を覚ましてしまうという浅い眠りを繰り返していた。
だからと言って眠ってしまうなんて。これでは映画の感想を話しながら食事、という計画が成り立たなくなってしまう。
「そんなに落ち込むなよ」
そう言われて、より落ち込む。
「悪い、眠っちまった…」
「別に俺は気にしてないから、お前も気にするなよ。な?」
「あー…あぁ…」
気にしないわけがない。思わずテーブルにつっぷしてしまう。
「それより、眠いってことは、お前無理してないよな?大丈夫か?」
そう言いながらアーサーのくせっ気を撫でる。
撫でられて、ちょっとだけ気分が向上するが、それでもやっぱり凹む。
「しんどいなら、言えよ?」
「おー」
今のこの、気を使われている状況がしんどいです、とは言えない。
本当はもっといろいろと考えていたのだ。もちろん、考えている段階でそれをすべてクリアすることなんてできないってことくらいはわかっていたが、ここまでできないとは…。
自分の情けなさに涙が出てきそうだ。
「なんだって、そんなに凹んでるんだよ」
疑問をぶつけられて、アーサーは黙る。
テーブル突っ伏してしまっているアーサーの顔を覗き込むギルベルト。
そのピジョンレッドの瞳には純粋な疑問が浮かんでいる。無視するわけにはいかない、というか、この目に弱い。
そもそも最初に惚れたのはこちらなのだから、勝ち目なんてどこにもない。
「だって…初めてのデートなのに、最初から失敗だらけじゃねぇか…」
ぽつり、とつぶやいた言葉はギルベルトの耳に届いていたらしく、ぽかんと口をあけている。
ああ、なんて情けない…。
「お前…ばっかじゃねぇのか?」
「うっ…」
ぐさり、とギルベルトの言葉が突き刺さる。
バカだよ、わかってるよ!と言いたいが我慢する。
「失敗なんてなぁ…俺だってしてるっつーの…」
「え?」
ギルベルトが失敗しているところなんて見ていない。
思い当たる節さえない。
「だって、お前がまさか約束の時間よりも前にいるなんて思いもしなかったから、お前のこと待たせちまったし…」
「それは」
「それに、映画のとき起こさないほうが良いと思ったけど、お前は起こしてもらいたかったみたいだったし…」
それに関しては自分が全面的に悪い。ギルベルトが気にするようなことではない。待ち合わせの時間だって、自分が勝手に早く来ていただけだ。
だと言うのにギルベルトは気にしているのか、表情を曇らせている。
「だから、お互い様だし」
「ああ」
「だから…そんなにつまらなさそうな顔するなよ…」
ずっと眉間にしわよっててる顔見たくない、と言われ初めて気づく。
ああ、自分はずっとそんな顔をしていたのか。それじゃあ、ギルベルトが心配そうな顔をするわけだ。
「悪かったな」
ギルベルトの額に自分の額を軽く当てる。
すると、バツが悪そうに視線をそらすギルベルト。
「ちょっと緊張してた。失敗続きだったし」
「緊張することなんて、ないだろ…。そ、それに…デート、何度でもすればいいんだし」
失敗なんて気にしないでくれよ、と言われる。
そんなことはアーサーの頭に入って来なかった。それよりも、何度でもデートをすればいい、という言葉に舞いあがる。
それはつまり、これからも一緒に会って、こうしてでかけることができるということだ。
学校以外の場所で、プライベートで、それが聞けただけでもうアーサーはうれしくてたまらない。
「そ、そうだよな!」
うれしさがあふれ出る。
本当に、ギルベルトの言葉ひとつでここまで気持ちが変わるのだ。
これほど素晴らしい日はない。
「なぁ、キスしていいか?」
「は?こ、ここで?」
ギルベルトはきょろきょろと店内を見回す。休日とあって人で混みあっている。
そんなところでキスをするのは恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。
「ダメか?」
「……み、見つからないようにしろよ、」
そう、かわいらしく口を尖らせて言うものだから、アーサーは顔をほころばせると背の高いメニューを持ち上げ、それを広げる。
それを壁にして見えないようにしてから、触れるだけのキスを顔を真っ赤にして瞳を閉じているギルベルトの唇に送った。





【かっこわるいところも含めて、愛してる。なんて言えないけれど】




End