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ツキミドリ
ツキミドリ
novelistID. 13447
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【APH】リボン(英リヒ)

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ああ、苦手なタイプだ。

彼女の第一印象はまさにそんな感じだった。
今日は、会議が無事終わったことを祝う立食パーティだった。そこで、アーサーはバッシュから彼女を紹介されたのだった。

彼女はバッシュと同じく、肩より少し短めのショートヘアで、バッシュの斜め後ろから、こくりと小さくお辞儀をした。こういう大人しいタイプはあまり得意ではない。嫌いなわけではないが、自分で主張しないから、余計に気を使ってしまうのだ。アーサーは彼女と対照的なアルフレッドを思い浮かべた。彼は、わがままだが、一緒にいれば、何を考えているか分かるし、こちらも気を使わなくていい。そういう意味では楽な奴だった。
もちろん、苦手意識を持っていても、相手にそれを悟らせはしない。そんな紳士精神に反する行為はしないという矜持をアーサーは固く守っている。

手早く挨拶を済ませて、他の場所に移ろう。
バッシュは手を出したら許さんという分かりやすいほど殺意のこもった目をこちらに向けてから、食べるものを取りに場を離れた。アーサーはとりあえず紳士スマイルで型にはまった挨拶をすることにした。向こうは、ちょっと緊張が解けたのか、軽く笑った。

その、純情そうな笑顔が余計癪に障った。それが、嫉妬だったのか、羨望だったのかは今となっては分からない。ただ、ちょっと意地悪をしたくなった。
髪についている、赤い、けれど濃すぎないリボンに目をやる。リボンは彼女の淡い茶髪に程よくアクセントをつけており、よく似合っていた。
「その髪につけているリボンはバッシュが選んだのか?」
「はい、そうです」
彼女は恥ずかしそうに、だけど誇らしげに笑った。
優しさを装い、さりげなく、アーサーは用意したセリフを口に出した。
「よく似合っている。けれど、少し陳腐だな。俺がもっと上質なリボンをプレゼントしてやるよ」

 怒るか、と思った。いや、違う。怒ってほしかった。しかし、そんな彼の思惑に反して、彼女はただ優しく笑うだけだった。
「いえ、兄さまが選んでくれたというだけで、私にとっては幸せなんです。上質なリボンよりも兄さまが選んでくれたリボンの方が、私はずっと嬉しいです」
 模範的な答えだ。だけれど、そんな模範的な答えを心底から幸せそうに言っている彼女にアーサーは何も言えなかった。俺がひねくりすぎなんだろうか。惨敗か・・・。笑おうとしてうまく、笑えず、苦笑した形でアーサーは謝った。
「そうだよな、悪い」
「いいえ」
とまた微笑して、彼女は「でも」と続けた。
「アーサーさんも兄弟思いのように見えますよ」
「俺が?そんなわけねぇよ。あいつも俺から離れたくて独立していったしな。」

視線を彼女からずらすと、ちょうど、彼女の右斜め後ろの遠く離れた席で、アルが菊たちと笑い合っていた。予想通り暴飲暴食している。あとで叱ってやらなくちゃな。
「そのリボン、弟さんに贈られたものじゃないんですか」
視線を戻すと、彼女は自分の胸あたりを指差していた。アーサーもつられて自分の胸辺りを見ると、そこには真紅のネクタイリボンがあった。

毎回毎回、派手なプレゼントばかりを買ってくるアルに文句をつけていたら、ある日、アルに「だったら自分で選んでもらうんだぞ!」と自分のプレゼント選びに連れまわされたことを思い出した。何が悲しくて自分のプレゼントを自分で決めなくちゃならないんだ、と思いながらも、ああでもないこうでもないとアルと議論することが楽しかった。結局、一日がかりで回った挙句、プレゼントは最初に寄った店で見た真紅の無難なネクタイリボンになった。あいつはそれでほっぺたを膨らませて怒ってたっけか。大きくなってもまだ子どものままなんだなと思ったことが記憶に残っている。

「これは、俺が自分で選んだんだ」
なんとなく彼女の問いを肯定することが悔しくてそう答えた。まあ、最終的に選んだのは自分なのだから、間違ってはいない。
すまなそうに謝りかけた彼女の声を遮る。
「まあ、弟に贈られたというのは事実だ。俺はバッシュと違って不甲斐ない兄だけどな。」
正解を言っているのに、謝られてはこっちが申し訳ない。
「そうでしたか」
と彼女は良かったと思っているのがこちらにも伝わってくるようなほほ笑みで言った。
「プレゼントを贈るということは感謝している証ですよ。不甲斐なくなんてないです」
優しそうなほほ笑みに反して、口調は案外強く、きっぱりとしていた。
そのことが意外で、お礼が遅れた。
「ああ、ありがとう」

 バッシュが戻ってきて、他の者にも紹介するから来てほしいと、彼女を連れて行った。彼女の後姿が離れる前に、アーサーは声をあげた。
「また、会えるよな」
彼女は呼び止められたことに少し驚いたようだったが、すぐに優しい笑顔になった。
「ええ、いつでも」
もうその笑顔が癪に障ることはなかった。