「暗殺計画」
そんな予告状に今更驚く繊細な神経の持ち主はいなかった。
だが、予告がある以上警戒だけは必要で。
「というわけでエドワード君とアルフォンス君は当面の間大佐の家で暮らしてもらいます」
そのホークアイの言葉に苦虫をつぶしたような子供が一人。
不貞腐れた顔つきで、それでも仕方ねえとばかりに腕を組んでいる。
「にーさん、そんな顔やめてよ」
弟の咎めるような声も聞こえないふりでエドワードはふいっと勝手に執務室を出て行こうとした。
「鋼の」
ロイが投げたのは家の鍵。エドワードはそれを片手で受け取った。
「んじゃ、勝手にアンタの家に行ってるぜ。行くぞ、アル」
不機嫌さを前面に出したその声に、ロイは「ああ」とため息のような返事をした。
――同居など嫌だというのはお互い様だろう鋼の。ここは一つ大人になって短い期間だけでも少しは譲歩しないかね?
そんなことを言ったところで聞きはしないだろう。ロイは半ばあきらめモードに入っていた。
が、しかし。
司令部を後にして、ロイの部屋についた途端、エドワードはにんまりと笑ったのだ。
「ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふ……」
終わらない兄の笑い声に、アルフォンスはげんなりする。
「ここがっ!ここが大佐の家かっ!アイツ帰ってくるの遅いよなっ!今のうちにクローゼットとか覗いておいてパンツの一枚くらい盗んどけ。あ、それとも大佐の枕にダイブしてアイツの匂いとか嗅いじゃおっかなーv」
げんなりと、それ以外のどんな言葉があるというのだこんな兄にっ!!
アルフォンスは怒りも辛さも脱力感もさまざまな感情がミックスされた倦怠感に襲われて自分の運命を呪った。
兄さんが、実は大佐LOVE~なのは知ってるよボクっ!殺気立ってしかめっ面してたのはそうでもしておかないと笑いが止まんなくなってどうしようもないからだってこと、いやってほどわかってたっ!!大佐の前では隠すクセにホントのところは朝から晩まで大佐大佐大佐大佐大佐大佐大佐ってうるさいくらいだもん。だけどこんな兄は絶対嫌だ、身内の恥だ。頼むから犯罪者になることだけはやめてくれ。
「せめて兄さん。襲うのなら合意の上でね……」
アルフォンスの倦怠感など何のその。ふふふというエドワードの笑い声がロイの屋敷に木霊した。
おそまつ!!