8月4日は橋の日だったんだって 静雄と戌井!
静雄は玄関の前に座り込んでいる戌井の肩を揺すった。
「戌井」
「・・しずお?」
戌井はゆっくりと顔を上げると静雄の名前を呼んだ。
「大丈夫か戌井」
「し・・ずお」
「どうした?怪我でもしてんのか?」
静雄がそう聞くとフルフルと頭を振った。
「とりあえず立てるか?びしょ濡れだぞ」
静雄は戌井の腕を掴むと引っ張り上げた。
「っと・・大丈夫か戌井?」
ぐったりと静雄に凭れかかっている戌井は少しだけ頷いた。
「ホントに大丈夫か?」
「・・しずぉ・・」
「んだよ」
「・・いっしょに・・て」
「あ?」
「俺と一緒に消えて」
「っ?!」
静雄の腹に当てられているのは銃口だった。
「戌井っ!」
「しずお・・おれあんたがいなくなる気がして・・だから、その前に俺が」
「っざっけんな!」
「うっ?!」
バシリと叩き落とされた拳銃が廊下を転がる。
「静雄っ」
「ふざんけてんじゃねえ」
「いっ」
静雄は戌井の腕を掴むと廊下を進んで浴室に投げ込んだ。
「しっかり温まるまで出てくんじゃねえぞ!」
そう言って静雄は勢いよく扉を閉めた。
「しずお」
「温まったか」
「俺・・」
「ホットミルクでも飲んで寝ろ」
静雄は手に持っていたマグカップを戌井に突き出した。
「それ飲んで、ゆっくり寝ろ、変な事考えてんじゃねえよガキが」
「・・静雄とそこまで歳離れてないんだけど」
「うるせえさっさと寝ろばか」
静雄は戌井のまだ湿った虹色の髪の毛をわしゃわしゃと撫でた。
「・・ありがと静雄」
戌井はそう言ってコップに口をつけた。
作品名:8月4日は橋の日だったんだって 静雄と戌井! 作家名:ユズリハ