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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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「毎日毎日、裏の神社を参っているおまえは、本当にえらい。ああまで忍耐強く参れるのはおまえの才能だよ。しかもいつも私や蜂屋のことを案じてくれて……」
「え、なんで知ってらっしゃるんですか?」
 日課の参りを隠しているわけではないが、その中身まで知っているのはおかしい。
「言っておくけれど、毎日じゃないんだ。でも、私はね、実はおまえの願っていることはかなり聞いてしまっている。もう隠せないから言うけれど、おまえが最近うちの近くにやってくる旅芸人のあの子にけ」
「旦那ああああ!」
 大声で主を遮りながら、八左ヱ門の両の手がなんども空を切る。なぜ、なぜ旦那が知っている、その言葉がぐるぐると頭のなかを駆け巡る。
「え、なにそれ雷蔵、八左ヱ門がなに?」
「いや、最近うちの近くで蛇やらなにやらを使った見せ物があるじゃないか。八左ヱ門はあれの」
「旦那あああああああああ!」
「ごめん」
 八左ヱ門はあまりのことに肩で息を吐いている。どうしてだ、どうしてばれている、声にせずとも体で充分表現している自信があった。しかし、雷蔵が明らかに話を一旦そらすために提案したことこそ、思いがけなかった。
「なにしろ、見た方が早いかね。八左ヱ門、自分の履物を取っておいで」
 そう言うのと同時に、察しの良い三郎が部屋の一角にある半畳を持ち上げた。出てきたのは、石の階段だった。外の湿った空気が鼻を滑った。
 今日は驚きすぎて心臓が止まってしまうかもしれない。

 履物をはき、おそるおそる下がった先。上等な蜜蝋に火をともすと、ほうと息が漏れる。美しい岩壁があらわになった。真っ暗な一本道。遠く向こうから、微かに雨が聞こえる。やはり外と繋がっている。
「足下をお気をつけ。滑るから」
「雷蔵、転んだことあるものね」
「おや、なんのことだい?」
 笑い声が反響した。その横で、八左ヱ門は硬く重い岩に触れている。
 まるで磨かれたように輝いている。さながら、天の川といったところか。これは人の手でしっかり管理された洞だ。
「ほら、あそこだよ」
 雷蔵が指差した先はどん詰まり。雨が筋上になって降り注いでいた。天井に空いた穴が、外界に繋がっているのだ。
 箱のようなものが、ちょうど八左ヱ門の頭のあたりで浮いている。横に突っ張った木の棒で支えられているらしい。
「これ、お賽銭の受け箱ね」
「え、ええ」