二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

the ALLリバース【夏コミ新刊サンプル】

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「こら仁王、待たんかっ、無視をするな馬鹿者」
「ぐぇっ、オイ痛いわおっさん」
綺麗に色が抜け落ち、まるで光を纏ったような白い頭。何度真田に怒鳴りつけられても懲りないその男の名前を、柳生も覚えてしまっていた。首根っこを掴まれ御用となった仁王は両手に大量の紙袋をぶら下げている。
「……なんだこれは」
「あー……女子共に押し付けられての」
「理由がない限りそういうものは受け取るなと言っているだろう。没収だ。それとネクタイが曲がって……」
「いやぁ、引き取ってもろて助かったわ。取りには行けんからそのまま捨てとくダニ」
「何だとっ」
小言を遮って意気揚々と差し出された紙袋の束に、真田が思わず後退さる。
「今日、誕生日での。知らん奴からもほいほい渡されて処理が面倒になってたところじゃ」
「それは受け取れませんね」
思わず、柳生の口から言葉が転がり出ていた。いけない……これでは様子を窺っていたことがあからさまだ。
気が付いた時には遅い。仁王がゆっくりとこちらを振り返る。
眼が合う寸前、気まずさを隠すように眼鏡のブリッジを押し上げた。
「なんて?」
「それは女性から君へのお祝いの気持ちなのでしょう。もし捨てるつもりだったのならば、君は最初から受け取るべきではない」
……怒りを露にして声を荒げるだろうかと、外見が派手な生徒との、似たような経験の中から予想を割り出して身構えてはいたのだが、その瞬間はいつまでたっても訪れなかった。
そっと男を窺うと、呆気にとられたような表情が目の前で静かに穏やかなものに変化した。
「そん通りじゃの。断れん俺が悪い……これ、後でどこ取りに行けばええん?」
「……誕生日ならば先に言え。立派な理由だろう」
振り仰いだ真田は、ばつの悪そうに視線をそらして呟いた。その様子に眼を細めて仁王が揶揄するようににやにやと笑う。
「へぇ、おっさんも意外と甘いのぅ」
「うるさいぞっ、まだネクタイが曲がってい……」
「ん」
またしても真田をスルーしてさっと踵を返すと、思いがけず仁王は柳生の目前に歩み寄る。顎を突き出すようにしてこちらを向いた仁王に戸惑った。
「両手が塞がっとるんじゃ。ん」
そう言われて、やっと男が何を乞うているのが分かった……真田に正されるとどうなるのか彼は良く分かっているようだ。ふっと笑みを漏らして、首元に柳生は手を伸ばした。だらしなく垂れ下がっているネクタイに触れる。
普段、自分はここまで乱れた人のタイを結び直すことはない。いつも自分で締めるのとは違う、向き合った形でだと少し、難しかった。
何とか襟元まで結び目をきゅっと引き上げると、そっと手を離す。
「お誕生日おめでとうございます」
小声で囁く。普段はしないような、特別なことをしたのも、自分からのささやかなプレゼントのつもりだと、そう想った。
仁王はちょっと驚いた顔をして、それから「あんがとさん」と呟き小さく微笑んだ。