池袋のとある洋菓子店~木曜日~
池袋のとある洋菓子店~木曜日~
「いらっしゃ…はぁ」
「おいおい、俺の顔を見た途端に溜め息なんて酷いじゃないかハニー」
「六条さん……」
僕の事をハニーとふざけた様に呼ぶこの人は六条千景さん
埼玉からわざわざ来る変なお客さんである
最初来たときは女の子を3人ほど連れていたのに
2回目からは絶対に1人で来ている
「また来られたんですか六条さん。ハニーって呼ばないで下さい」
「あぁ、俺に会えて嬉しいだろ!冷たいこと言うなよハニー?」
「はぁ……」
この人は人の言うことを聞かないし
打たれ強いというか何というか
なんで気に入られてるんだろ僕……
「それで今日はどれにしますか?」
「そうだな……ハニーのオススメは?」
もう突っ込むだけ無駄なのだろうか
「……そうですね、シフォンケーキとかどうですか?」
とりあえず今日はさっさと買って
さっさと帰ってもらおう
今日はこの後用事があるんだし
「じゃあそれを2つ」
「かしこまりました、950円になります」
「じゃあこれで」
「1000円お預かりしたので50円のお釣りになります」
「どうも、なぁハニー今日のバイト何時まで?」
「何でですか、手を離して下さい」
お釣りを渡したら
そのまま手を握られてしまった
何か嫌な予感が
「終わったらデートしようぜ!俺待ってるからさ」
やっぱり……
「嫌です。なんで六条さんとデートしなくちゃならないんですか。手を離して下さい」
「ツンデレか?ツンデレなのかハニー?そんなの帝人が俺のハニーだから決まってるじゃないか!」
ツンデレって……
ダメだこの人……
仕方ない、もうはっきり言ってしまおう
「デートは無理です」
「何か用事でもあるのかいハニー?」
「あります」
「何だよその用事って」
「それは……「どうかしたか帝人?」」
僕が話そうとしたら
静雄さんが接客の長い僕を気にしてか奥から出てきた
「静雄さん」
「何で帝人は手を握られてるんだよ」
静雄さんは僕の手の方へ視線を向け
眉間にシワを寄せている
「あの」
「俺がハニーの手を握って何が悪いんだ」
「あ゛ぁ!?誰が誰のハニーだと?」
「帝人が!俺の!だよ」
「んだと、てめぇ!」
「静雄さん駄目ですストップ!」
静雄さんは六条さんに殴り掛かりそうになったが
僕の声で目の前寸前で止めた
この静雄さんを見て微動だせずに睨みつけてる六条さんも凄いな……
「何で止めんだよ帝人!」
「やっぱりハニーは俺のこと「違います」」
要らぬ誤解生まれないように先に釘を打っとかなきゃね
「店の中で暴力は駄目だって言ってるじゃないですか!」
「でもコイツが」
「でもじゃありません!店を壊したらどうするんですか!」
「……すまん……」
「六条さん!」
「なんだいハニー?」
六条さんが僕をハニーと呼ぶごとに静雄さんのこめかみが……
もうさっさと言ってしまおう
「デートはできません。僕、この静雄さんとお付き合いしてますから」
「なんだと!?」
六条さんは僕の言葉に驚いている
「この後も仕事が終わったら静雄さんとデートなんです。ねっ静雄さん」
「おっおう」
六条さんは今までにないくらい凹んでいる
なんかorzみたいになってるし
「だから諦めて下さい」
「…………ぃ」
「なんですか?」
「俺は絶対に諦めんぞ!ハニーをコイツから奪い取ってやる!」
六条さんは直ぐに立ち直り
いらないことを宣言した
どれだけ立ち直り早いのさ……
「んだと!」
静雄さんは静雄さんで怒ってるし……
「ハニーを絶対に俺に振り向かせると言ったんだ!ハニー覚悟しなよ、これからは猛アタックしてあげるから。じゃあねハニー」
六条さんは言いたいこと全て吐き出して帰って行った
本当にマイペースだ
最後はいつも通りの六条さんだったし
ていうか六条さん……
予想外の切り返しだったな
普通あそこは諦める所でしょう
僕の何処にそんなに魅力を感じてるんだろ?
「帝人!」
「はいぃぃ!」
僕が物思いに耽ってると
いきなり静雄さんに呼ばれて肩を捕まれた
「お前は俺が絶対に守ってやるからな!あんな野郎には渡さねぇぞ!」
「あっありがとうございます」
「おぅ!」
静雄さん……
目がヤバイです
もう六条さんを殺しそうな目をしてますって
ギラギラしてますよ
なんだかこれから大変そうだな……
「はぁ……」
僕は静雄さんが気付かない所で小さく溜め息をつくのだった
そんなこんなのこれからが何だか心配になってしまった木曜日でした
End
作品名:池袋のとある洋菓子店~木曜日~ 作家名:神郷