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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】異

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 「かわいいコリンクだね」
 そういう風に言われてちやほやされていたこのコリンクは、昔はそれはそれはかわいいだけで、私のいわばペットのような家族のような、そういう存在だった。
 でも、ポケモンバトルがはやると、私もその子をつれてバトルに出かけた。コトブキ北側の204番道路では私と同世代の子供たちが自慢のポケモンを競わせていた。いつもいつも私たちは勝っていた。周りの子たちが出すのはムックルとかスボミーとかビッパとか、コリンクからしたら弱い耐久力のポケモンだったから。コリンク使いも射ないことはなかったけど、私たちの敵になれるくらいの強さではなかった。
 いわばいきがっていたのだろう。そんな私たちの鼻を折るようなあのトレーナーが現れるまでは。

 「弱いなあ、君」
 赤いベレーみたいな帽子をかぶり、青いコートを着て、ナエトルをつれたそのトレーナーは年もまだ私と同い年くらいで、しかしそのポケモンの力は段違いだった。
 「かみつくばかりでどうしようもないな。僕のナエトル・アースがそんなんでひるむとでも思っているのかい?」
 鼻で笑う彼にムカついて、コリンクにかみ砕くように指示をしようとした矢先、コリンクが倒れた。気がつかぬうちに宿り木の種を植えられていたのだ。
 「…僕に挑むならもっと強くなってからにした方がいいよ。僕はこの先も強くなる。…みずからの理想のためにね」

 #

 私はそれから特訓を始めた。ふっかけられた喧嘩はすべて応じ、スクールで学び、そして電気ポケモンでありながらクロガネジムでバッジすらとるほどになった。
 しかし、それでもまだまだというところだった。別に強いトレーナーは彼に限ったことではない。
 金髪でオレンジの横縞長袖Tシャツを着た同い年くらいのトレーナー、ジュン。彼の手持ちの日小猿の炎攻撃に、私のコリンクは翻弄され、私はなにもできないうちに終わってしまった。
 「よしっ、ナイスファイト!」
 ヒコザルをほめながらジュースを飲ませる彼は、ふと私の方を見ていった。
 「…もっとたくさんポケモン持ったらどうだ?」
 「へ?」
 「一匹で対応できる相手なんて限られてくるだろ。もっといろんな種類を持つべきだ」
 彼はそういって、一つ付け加える。
 「また闘おうぜ」

 #

 二人の少年。二人のそれぞれのポケモンの使い方も考え方も違ったけれど、私はその二人のおかげで、ここまで来ているんだ、と実感する。
 「…強いんだな、ナオちゃんって」
 「ミニスカートだけどやるでしょ」
 「私もミニスカートだけど」
 「そっちはコート着ちゃってるじゃん」
 「あははっ、そうだね」

 今の私の競争相手、エンペルトをパートナーに闘うヒカリちゃんは、また違うタイプの人だった。
 年中熱くはない。でも年中冷たくもない。暖かい心の持ち主と言うべきか。彼女は人を尊敬する人だった。どんな人からもいろいろなことを学ぼうとする人だった。彼女は周りの人とともに笑い、泣き、怒る人だった。
 「この勝負終わったらお出かけしようよ」
 「いいね」
 そんな会話をしながら、闘うバトルは、またちょっと違う感じがする。
 ライバルとか、友達とか、そういうものを大事にする人って、なんかかっこいい。そう考えると、青コートの少年は、もしかしたらかつての自分と同じような、かわいそうな人なのかもしれない。