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盗撮が犯罪だって知ってますか?

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【盗撮が犯罪だって知ってますか?】
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「…いくら僕でも、それだけは見逃せませんよ」

ライルの求める相手と同じ声が、至極丁寧に、しかし鋭くライルの行動を指摘した。

「言うなよ、アレルヤ。こうでもしないとあいつの写真なんて手に入らないんだ」

「"盗撮は犯罪だ"って、家族から習いませんでしたか?」

静かに歩み寄ってきた彼―――アレルヤは、にっこりと笑いながらライルの手元から小さな機械を取り上げると、それを指先でパキリと割ってしまった。
行動だけ見てみると、あたかもライルが手にしていた機械が脆い素材で出来ていたように見えるが、当然そんなにやわなものではない。
それだけ、アレルヤの握力が強かったのだ。
ビルの屋上から落としてもヒビ一つ入らないという業界屈指の強度を誇る…今となってはただの鉄くずと化してしまった最新遠隔操作カメラを眺めながら、ライルはとてつもなく情けない顔をする。
住居侵入の罪で警察に突き出されてもおかしくないというのに、顔見知りというだけでそれを問わないことにして、盗撮についてのみ追求しているアレルヤに感謝すべき場面なのだが―――侵入しているという意識が希薄なのか、彼は全く気にしていないようだ。
ライルはアレルヤが指摘しないのをいいことに、カメラを壊された事に憤慨する。

「アレルヤ!これがいくらしたと思ってるんだ――――――」

「気づいた時のハレルヤの反応を考えてください。まず最初に文句を言われるのは、僕なんだから」

「なら、お前が協力してくれれば」

「お断りしますよ。ただでさえ、僕は貴方とハレルヤの関係を歓迎していないんだ。協力なんてもってのほかだと思わない?」

なるほど、道理だ。
アレルヤの尤もな主張に頷きかけて、しかしここで引き下がったら負けだ、という思いが頭を過ぎったライルは、一つ咳払いをすると、改めてアレルヤへと向き直る。

――――――アレルヤはライルの意中の相手であるハレルヤの双子の兄で、街中でハレルヤを見初めてからずっと彼を追いかけているライルに対して、妨害とも忠告とも取れる行動を繰り返してきた。
しかし、それが決して彼の弟の為だけではないということも、ライルには同時に理解できていた。
その優しさが協力の方向に向いてくれれば、これほど心強いサポーターはいない。

「お前が嫌がってるのも知ってるけどさ、それじゃあ俺やハレルヤの気持ちが置いてけぼりだ」

「ハレルヤは、貴方を鬱陶しがっている」

「――――――それが本心だと思ってるか?」

問い返すと、途端に彼が黙りこくる。
ほら、アレルヤも分かってるじゃないか。
内心で笑みを洩らしながら、ライルはもっともらしくため息をついてみせる。

「なあ、確かに俺は堅気の男で、お前達はスラムの住民だ。その上、ハレルヤには常に血なまぐさい喧嘩の話が付きまとってる。……だけど、立場と気持ちは全く別物だってお前もわかってるんだろう?」

堅気、と自分で言っておいて、ライルはその単語に対してむずがゆい感情が湧いてきた。
元々堅気と胸を張って言えるのはライルの兄だけであり、ライル自身は片足を違う世界へと突っ込んでいるような状態だ。だからこそハレルヤやアレルヤと知り合えたのだ。
しかし、それでも半分だけ残っている堅気の世界の住人としての立場を気にしたアレルヤが、ハレルヤに向かおうとするライルを全力で押し留めようとしてくる。

生体IDをもたない、データ上存在していないことになっているスラムの民であるアレルヤ達は、成人した今でこそ真っ当な仕事をしているが、それまでは人には言えないような事をして生きてきたという。
そんな汚れた自分たちとライルたちとでは、住む世界が違いすぎるというだけでライルを歓迎しないのだ。
妨害を続けるのは、ひいてはライルの立場の為なのである。
当人であるライルは全く気にしていないし、ハレルヤも写真を嫌う以外は、むしろライルとの時間を楽しんでいる節さえあるというのに―――つくづく、気の遣い方がずれているというか、頑なな男だと思う。

だが、それでも彼がハレルヤもライルも二人ともを心配しているのは事実なのだ。
だからこそ、ライルもアレルヤに対して強く出ることが出来ないし、嫌うことができない。

「盗撮以上に、ハレルヤの画像データが俺の所有物の中に残ることが心配なんだろ。大丈夫だって、ちゃあんとパスをかけて厳重に―――――――」

「誰の画像が、ナンだって?」

アレルヤと同じ声が、剣呑な響きでもって背後から降りかかってきた。
アレルヤとライル、二人が同時に音源へと視線を向ける。

「馬鹿らしい言い争いしてんじゃねえ!家の外にまで聞こえてたぜ」

「……ごめん」

まず真っ先にアレルヤを睨み付けた、アレルヤと同じ顔の―――厳密に言えばアレルヤとは逆方向の目を晒している―――男は、うんざりしたような顔で文句を垂れる。

「大体、なんだァ?俺の写真だって?んなもん、どうすんだ」

すぐに視線を移動させ、彼…ハレルヤはアレルヤを睨んだとき以上の鋭さでライルを見た。
しかしその視線に慣れきっていたライルは、悪びれもせずにあっけらかんと笑ってみせる。

「恋人の写真を手に入れてやることといったら予想はつくだろ?聞くだけ野暮だぞ、ハレルヤ」

「………」

わざとらしく視線を流して笑ったライルを見て、ハレルヤがあからさまに嫌そうな顔をした。
普段、仏頂面か凶悪そうな笑みか、という程度の表情しか見せたことのなかった弟の珍しい表情に、アレルヤが目を丸くしてライルと弟とを見やる。
しかし彼らにとってはこれが当たり前なのか、アレルヤの視線になど頓着する様子もなく論点のずれた喧嘩を続けていた。