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夢であるように

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眼前の景色はひどく不安定で揺らいでいるのに、そこにあるものが何か、それだけははっきりと認識できるのはどうして。



──夢であるように──



此処はどこだったかと頭が考えるよりも早く眼が、耳がこの見知った場所の特定を済ませる。そうだ、此処は        だ。
人がいた。沢山の人が、僕の前を、後ろを、右を、通って何処かへ向かう。
何処へ行くのか尋ねようとしたけどそんな事は分かりきっているから止めた。どうして分かっているのかは分からないけど、僕は皆の行動パターンを知っているから何も訊かない。
何かが揺らいだ。
邪魔されて、見えなくなって、見えるようになって、また人が来て、何も見えなくて、小さな人が、遠くで、ふらふらと動いていて、輪郭がぼやけて、色がぼやけて、視界がぼやけて、
その場からいなくなった、誰もいなくなった、広くて、大きくて、小さな狭い廊下にはぼやけた色も、ぼやけた輪郭も無くて、視界は曇ったままで、やがて、全くの静寂が満たす廊下を、僕は何時までも、眺めているのだ。
暗くて、大きくて、小さくて、明るくて、おかしいと思う、そんな暇も無く時間は、ゆっくりと、動いているのかも分からない速さで進むから。
ふと視線を外してまた戻すと、視線の先の人は消えていて。

────さっきまであそこにいた人が、戻ってこない。

ああ死んだんだと、思った。
遠近感も現実味も全てが無くなって何も分からない。
「彼女」が死んだのは僕のせいだ。
どうしようか僕はまた人を殺してしまった
そう思った途端顔を伏せて再び上げた時にはそこに彼女が戻ってきていて、良かった僕はまだ殺してはいなかったんだと安堵するのだ。
だと言うのに。
死んだ。「彼女」は死んでしまった。


僕が 殺した


何時もそこに在るものはなくて向こうにぽつねんと置いてある。そのせいで何時も、何も見えなくなると言うのに、まだ気付かない。なぜ気付かない?
気付きたく、ないからだ。
認識など、本当はしたくなくて、もう何も、見たくないのに、事実は否応なく、入り込んできてしまうから。
目頭は熱いのに、頬を伝うこの液体は温度が無いのか、手で触れるまで気付きもしなかった。
思うことは何もない。
感じるところも何も、無い。



真っ直ぐ伸びた廊下の向こうの部屋では小さな人が勉強をしているから動くのが見えるんだ小さな頭が大きく動いて何か喋るけど僕には分からない。

作品名:夢であるように 作家名:きじま