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できる限り安全な速度と方法

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「正義だとでも思ってるのかしら」

ストームフィスト攻略戦を終え、街に入り住民の声を聞きに歩く。それは今までどの街でもやっていたことだったから、今回も自然、リオンを伴い街に出た。



──できる限り安全な速度と方法──



新市街から旧市街へと歩いていくうち、怒ったような呆れたような、女の声が聞こえた。
女はゴドウィン派だったようで、しきりに反乱軍を批判している。
リオンも、何故だか今日はついてきたカイルも、その言葉に少なからず苛ついているようだ。そして、俺のことを伺っている。
まさか二人は、この程度で俺が傷ついたり怒ったりすると思っているんだろうか。心配してくれるのは嬉しいけど、同情の類いはしてほしくない。
それに、俺は平気だよ? 幼い頃から、批判なら幾らでもされた。その都度幾らでも耐えてきた。今更何も思えないのに。

「王子…そろそろ」

耐え兼ねたリオンの声に反応した女が俺達の方を向く。
一瞬変わった表情は憎々しげで、それでいて悔しそうなもの。────何とも、久し振りに見る表情だ。
その懐かしさに、制御できない己はごくごく自然に笑みの形を造っていて。

「─ッゴドウィン卿を討つなんて、自分が正義だとでも思ってるのかしらねっ」

お前は自分の信ずるモノならばすべて正義だとでも思うのか?
所詮負け犬の遠吠えにしかならないが、女は一言だけ怒鳴るように吐き捨て、その場から走り去った。
俺の二歩後ろを付いてきていたカイルがいつの間にか横にいて、いつもより僅かに低い声で俺にだけ聞こえるように言う。

「王子、今の……」
「──放っておいても大丈夫だよ。俺は、ゴドウィンにはなりたくない」

勿論正義なんかにもなりたくない。
カイルが最後まで言い切る前に切り捨てると、渋々ながらも一歩引くのが分かった。
そう。それで良い。俺は正義のために戦ってるわけじゃないのだから。
取り戻したいものがある。己が目的を達成するため正しいと思うことをやってきた。なるべく穏便に、出来ることなら戦なんて形じゃなく、話し合いたかった。甘いと言われてもいい。こんなことが通せる世の中でないことも知ってるけど、俺はこんな風に、戦いたくなんてなかったよ。

「……それでも」

実際戦は起きてしまい、人は何人も死んだ。それを無意味と言えばこの戦も無意味なものになってしまうから何も言わないけど。
俺の元に、そして彼の元に、一体各々何人の人間が何の目的で集ったのだろうか。
時に尊い犠牲となり、時に勇敢な兵士となり、時に将の優秀な片腕となり、時には盾にさえなった。
そういった者達は何を信じていたのだろう。

己の力か、主の理想か、戦場に流れる血か、この国か。

はたまた、正義などという滑稽なものを信じていた者もいるやも知れない。この国に正義を、正しいことを示すのだと躍起になっていたのだ。
果たしてそれは馬鹿馬鹿しすぎて、片腹痛いわと俺なら言うだろう。

「…正しいことと正義とはイコールではないよ」

風に流されそうなほど小さな声は、皮肉にも風に乗って女王騎士とその見習いの耳に届く。
世界のどこを探しても、正義の戦なんて有り得ない。何時の時代も、戦にあるのは大義名分だけだ。
俺も彼も、誰も彼もがこの国を愛していた。それ故対立し、抗争が起こり、戦にまで発展した。誰も悪ではないし、誰も正義ではない。
根底にある気持ちは同じなのだから、決して分かり合うことはなかっただろう。
だが戦でしか決着がつけられなかったことを悔やむ気はない。

正義も悪もない世界では、罪悪感すら意味を持たないからだ。


少し早すぎたんだ。少し急ぎすぎたんだ。少し危ない橋を渡ろうとしただけなんだ。
少し、方法を誤っただけなんだ。