再見、心愛的人
とりあえずさよならだ。
今はもう、共にはいられない。
いずれ別れるだろうと薄々分かってはいたが、いざその時となると、やはり惜しくなる。
お互いがお互いに、顔を見合わせて苦笑する。
いよいよ、猶予はない。
それぞれの前に伸びた道、一歩踏み出せば戻ることは二度と叶わない。
だがそれでいいと思ったのも事実だ。何故なら、いつまでも共にいるには少々苦しい相手だ。
では、全く未練がないのか？
問われれば、イエスとは応えられない。
未練がなければ、今まで付き合ったりなどしない。
既に彼は道を進み、背中しか見えない。
けれど、一言だけ、どうしても伝えたい言葉を思い出してしまった。
どうして今更。
そう思いはしたが、折角思い出せたのだ。
遥か遠くを歩く彼には聞こえないだろうけど、餞として渡しておこう。
あの時言えなかった、最後の一言を、
どうか贈らせてください。
「さよなら、大好きな人」