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仰ぐ空

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たすけてこわいよこれはなにどうして父さんも母さんもねてるのねえはやくおきていえにかえろう?

いえならもうこわくないよだからふたりともはやく。

なにかいるよこわいよぼくひとりじゃいえにかえれない、






だけどそこには、もうなにも無かったんだ





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父さんも母さんもひどいけがをしたんだはやくきゅうきゅうしゃをよばなきゃ。



それが音となり自分の耳に届いたことで、僕は目が覚めた。
看護士によって運ばれた昼食を食べ終わり、ふと窓から景色を眺めると今日は快晴。あまりにも青い空は、目が焼かれるかと思うほど。
そのままじっとしていたら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。

それにしても、と、僕は腕に巻かれた包帯に目をやった。
ほんの二日前、青信号を渡っていた僕に向かって突っ込んできた乗用車と接触して、左腕の骨にヒビ、右足首を捻挫した。居眠り運転だったそうだし、結構な速度で真っ直ぐ突っ込んできたから、僕がこんな軽症で済んだことは奇跡的なことらしい。
らしい、というのは周りが散々そう言っていたから、きっとそうなんだろうなと解釈したから。そしてぶつかる寸前、何かに手をひかれたような気がしたからだ。
つまり僕は、普通に歩いていたところをいきなり後ろに引っ張られ(右足の捻挫はこれだ)、体勢を崩したから慌てて、思いきり左手を後ろに付いた(だから左腕にヒビ)。
居眠り運転の張本人には、僕の怪我に対しての直接的な罪は無いのだ。勿論、事の発端は居眠りなわけだけど。
この怪我の8割程度は自業自得なのに、なんだか大仰に騒いでいた皆には悪いが、ヒビくらいで入院させないでほしい。

もっとも、入院というのもこの短い人生で既に二度目である。慣れはしないが、別に不便とも思わない。
ただこの時期に、叔父さん達に迷惑をかけることはしたくなかった。
何故なら、この春に僕は引越し転校というお金のかかることをするからだ。
早くに父母を亡くした為、今は養ってもらっている身。通いたい学校がある、というわがままを、快く了承してくれた叔父さんにこれ以上世話を焼かせたくないのに。

まあ仕方ないか、世話好きだもんな。さすが父さんの弟。

そうやって無理やり自分を納得させて、ふと思い出す。
先ほどの夢。
まさか今更思い出すとは思ってもいなかった。薄情ながら、もう忘れ去ったと思っていた。
大抵、こうやってみる夢は何事かの暗示であることが多いらしいのだけど、僕の場合はこの入院がきっかけなのだろう。
自分でいうのもなんだけど、予知夢や暗示とかいう類には全く縁の無い僕のことだし、と結論付けて、包帯塗れの腕から目を離す。



窓の外は、快晴。
青い空は目を焼きそうなほど。






Please without erasing it,
You are the only clue.

作品名:仰ぐ空 作家名:きじま