二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

三月三日

INDEX|1ページ/1ページ|

 

これはね、僕の相棒だよ。
僕を護ってくれる、大切な、大切な。
ずっとこれと居たんだ。まさしく、あれ。
健やかなる時も、病める時も、喜びのときも、悲しみのときも、………ってやつ。
ん?
あはは、妬いてくれてるの?
ありがとう、大丈夫だよ、これはあくまで無機物であって、愛情を向けてるわけではないから。
どっちかと言えば、アイギスの方が好きだし。
……あ、照れてる。
何で隠れるの、可愛いよ?

だから、はい。
これはアイギスに。
あげるよ、もう僕には必要ないみたいだから。
はい。遠慮しないで受け取ってよ。
いいよ、…………ごめんねアイギス。



ありがとう。



---------
あの時彼は珍しいぐらい喋っていたように思う。それも今となっては確認の仕様もないのだが。
彼女があの時の彼の様子に気が付いていれば、
こんなことにはならなかったのだろうか。




思えばあれは、あの日は、
最後の戦いが終わって、
いい加減皆との約束が果たされるのか不安になりだした、

卒業式の二日前、



三月三日の、事だった。
---------



「……眠い…」
「いいですよ、皆さんが来たら、ちゃんと起こしますから」
「………………」

あれ以来彼はやっぱり寡黙で。
今も屋上には彼と彼女の二人きりだというのに、会話と呼べるほど長いこと話したりはしない。
二日前に感じたことは、彼女自身感知出来ないくらいのところで、些末な杞憂として処理されようとしていた。

「……」
「……」
「………?」

ふ、と。
彼女が何かの違和感に気が付いた。

「なんだか、……すごく、眠いな……」

彼の様子が、なんだかおかしい?

「やっぱり少し、眠ってもいいかな……」

彼女に、具体的にどこがどうおかしいなんて的確なことは言えないけれど、それが無性に悲しくて、切なくて、虚しくなって、

「……アイギス?」

突然落ちた液体に、些か驚いたような彼を見て初めて、泣いていることに気が付いた。
必死で目元を拭う彼女の努力も虚しく、液体はポタポタと顎を伝って落ちていく。

「アイギス……」
「……ッ、おやすみ、なさい…っ……眠ってしまって、も」

彼にこんな顔は見せられない。彼の記憶に残る最後の顔がこんな泣き顔だなんて、そんなの彼女には耐えられない。




さいごの、かお?




「大丈夫、ですから……ッ私が、ちゃんと…………」
「……アイギス…」
「皆さんが来たらっ、私が」
「アイギス」

彼女の呼吸が引き攣れたように止まった。


「……ありがとう」


そのまま、彼がゆっくりと目を閉じてしまうまで、彼女は息を詰めたまま。
静かに息を吐き出して彼女が触れた彼の頬は、まだ、温かいのに。

「おやすみな、さい……っ」

と、屋上に上がる唯一の階段から人の声が聞こえてくる。
紛れもなく、彼と彼女が待っていた人達の、声が。

「…………おやすみなさい」

彼女はもう一度、目を閉じたままの彼に囁く。
彼が待ち、望んでいたものが、もうこの場にやって来る。それは彼女も同じように望んでいたけれど、真中に彼がいなくては完全ではないのに。

もう、彼は、いないのだ。





Life is a jest ; and all thing show it.
I thought so once ; but now I know it.

もしも、
私がここで泣いて泣いて縋れば、あなたは、いかないでいてくれますか?

作品名:三月三日 作家名:きじま