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繰り返す残像

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昔はこうではなかったように思う。人数こそ少なかったがちゃんと会話できる級友という者がいた。彼らと関わりを持たなくなったのは、果たしていつからであったか。
確かに覚えているのは、あれは中学の三年生に進級した頃。受験生であり多感な年頃でもあるあの時期、何かがあった。それ以来彼らとは距離が空いたのだ。それは覚えている。だがそれだけだ。
具体的に何があったのか、どの程度の出来事だったのか、誰が関わっていたのかは、全く思い出せない。ただ分かっているのは「何か」があった故に級友達と距離が空いたこと。あれから他人と付き合うことが徐々に億劫になり、なんとか入学した高校でも人当たりの良い自分の仮面を被ることが当たり前になったが、内心かなり疲れていた。
実は自分でも理解してはいた。このままでは遅かれ早かれ今の生活を維持できなくなると。
自分で言うのもなんだか、キャパシティはそんなに少ないつもりはない。しかしストレスには滅法弱い。小さい頃の話だが、あまりの緊張と不安で戻してしまったこともあるくらいだ。もちろん今は小さな子供ではないし、それなりに成長もした。だが相変わらずストレスには弱いのだ。
あの時の予測通り、高校生になって初めての夏休みが終わる頃、生活の維持は困難になった。
とはいえ日常の生活は今までと然ほど変わらない。変わったのは学校に通えなくなったことだけだ。
まず、朝起きられない。目は覚めるのだが体が持ち上がらない。仕方がない、今日は休もう。大方、そう決めた途端にふっと体が楽になるのだが。
そんなことが続いたある日、ふと気付いた。これは延長であると。中学三年生のあの出来事、詳細はとんと思い出せなくとも結果は思い出すまでもない。あれが尾を引いて今の状況を作っているのだ。
後悔した。何故かは分からないが、後悔の波がどっと押し寄せてきた。
ああ、どうしてあの時、自分は―――。
今更後悔しても何も始まらない。今すべきは学校をどうするか考えることだ。
辞める。それは非常に楽な手段である。しかしこの状況、原因は自分である上に生来の負けず嫌いが発揮され、あっさりと却下された。休学するというのも、同じような理由で選ばなかった。
ならば考えるまでもなく通い続けるしかない。自分の記憶が確かなら、二年次までは出席日数不足で単位が足りずとも「救済措置」として設定されている単位認定テストで規定の点数以上を取れば進級できるはずだ。問題があるとしたら、卒業を控えた三年。さすがに卒業をそんな措置で認めることは出来ないからと、出席日数も考慮される。いくらテストで点が取れても、出席日数が一日でも足りなければ留年だ。
そこまで考えて比喩ではなく頭を抱えた。
これは学校をサボっている場合ではない。二年、三年の進級に関してはテストに合格すればいいが、卒業する為には今からでも学校生活に慣れておく必要がある。慣れる為には通い続けなければならない。
結果から言ってしまえばその考えは間違いだった。「今の状況に慣れる為」と言いながら、余計に心労を溜めてしまったのだ。
三年生への進級は滞りなく済ませたが卒業は出来なかった。次の年にもまだ卒業することが出来ず、気が付けば自分が三年生に進級した年に入学してきた子達と同じクラスになってしまった。
さてあと何度、このような事を繰り返すのだろうと思った。




「さすがにね、今年中に卒業できなければ、もう辞めることも仕方ないかなと思っているんです」
「…………」

菊の話を聞きながら曖昧に相槌を打っていたギルベルトも、ついに何も言わなくなってしまった。やはりこんな他人の話なんてつまらないのだろうか、しかしギルベルトが聞きたいと言ったから話したのだが……と逡巡するも、沈黙に耐え切れず先に声を上げたのは菊だった。

「…ギルベルトさ」
「俺はさ」
「はい?」
「昔……っつっても高校の時か。かなりやりたい放題やってたんだよ」
「はぁ」

ところが前触れもなくいきなり話し出したギルベルトの言いたいことが分からず、菊は気の抜けたような返事をする。言葉を繋げていくギルベルトに、今度はただ相槌を打つしかなくなってしまった。

「それでも腐れ縁でダチはいたし、留年もしなかった」
「……はい」
「結構楽しかったんだぜ。授業とかサボってゲーセン寄って遊んだりとか、屋上で煙草吸ってたりとか」
「未成年の喫煙は体にあまりよくないですよ」
「分かってるよ。……いや、あん時は分かってなかったかもな。でも、今は分かってる。それで、とにかく遊んでた。学生の本分は遊びだとまで豪語した。先公にな」
「それは、……随分と度胸がおありなんですね」
「あれは、度胸とかじゃなくて、世間知らずだな。数学が歴史が、将来一体何の役に立つ、とか言って、ロクに勉強しなかった」
「失礼ですけど、よくそれで卒業できましたね」
「どっちかっていうと追い出されたんだよ。問題児にいつまでも居座っていられたくないってよ」
「……」

学校もギルベルトもどっちもどっちな気がして何も言えずにうつむくと、ぽん、と菊の頭に手が伸ばされ、えらいえらい、と頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。

「その点お前は偉いよな。留年しても勉強してるんだから」
「――――っ」
「俺だったら一回目の留年で辞めてるな」
「……あ、あの、ギルベルトさんっ」

そんなに小さな子どもではないのだから、そう撫で回さないでください……!
抗議しようと勢いよく顔を上げた瞬間、玄関の扉が開く音が聞こえた。

「お、ルッツ帰ってきたか?」

あっさりと手をどけて、ギルベルトは玄関に向かった。残された菊は深々と溜息を吐いて、撫でられたところを触った。何故かそこが熱を持ったように熱い。
玄関からはルートヴィッヒとギルベルトの話し声に、フェリシアーノの声まで聞こえる。もしかして学校をサボった自分がここにいるのはあの二人の手前少し気まずいのではないかと思ったが、今はそんなことを考えられない。
ギルベルトが、ルートヴィッヒとフェリシアーノを連れて部屋に戻るまで、菊は頭に手をやったまま固まっていた。



(どうかこの幸せだった時間を忘れることがないよう。)
作品名:繰り返す残像 作家名:きじま