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疑問符ばかりね

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「あなたが僕を嫌いでも、僕はあなたを好きですよ。」
憎々しげな視線を向けてきながらも律儀に出されたお茶に、手をのばす。熱すぎず温すぎず、波江の淹れたお茶は渋みの少ない飲み心地で美味しい。わざと不味く淹れることも出来るがそうはしない彼女の優秀さを、帝人は確かに好ましいと思っている。本人はその優秀さ故に、鬱屈が溜まっているようだが。そこは、帝人の預かり知るところではない。
「…私の邪魔をしたくせに何を言ってるのよ。それとも、私のしたことを許してくれるのかしら?」
通常であれば、どんなに帝人が話しかけても無視を決め込む波江であったが、今回の帝人の発言に何やら気にくわない部分があったようだ。美しい顔が冷笑を浮かべ歪んでいる。
帝人は不思議そうに首を傾げた。
「いいえ、許すわけがないですよ。」
当たり前じゃないかといった風な帝人を、波江は睨む。
「矛盾してるわ。」
「そうですか?」
「そうよ。愛は、すべてを許すわ。相手のすべてを受け止めすべてを捧げるの。私にとってあなたのそれは、好意とは呼べない。撤回してちょうだい。」
帝人は、友人である矢霧誠二への執着を垣間見せた初対面の頃の波江を思い出す。帝人には理解出来なかった波江の言い分は、背景を多少知った今でもやはりわかったとは言えない。
ただ、自分と彼女の価値観があまりに違うのだけは理解していた。
「撤回は、しませんよ。僕はあなたも、あなたの雇い主も、許していない。けど、」
「…けど?」
「許さなくても、好意は持てます。僕の中で、許さないことと嫌悪することは必ずしも並び立つわけじゃない。」
一瞬眼を見開いてから、波江は表情を険しくさせる。憎悪の眼差しの中には、なにか得体の知れないものに対する戸惑いのようなものも含まれていた。
「…あなたって、気持ち悪いわ。」
そう波江は吐き捨てるが、自分の様に平凡などこにでもいそうな存在が、弟を愛するような女から唾棄される理由が帝人にはわからなかった。
作品名:疑問符ばかりね 作家名:六花