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ジョギング

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古泉とのプライベートタイムにかなりの余裕が出来始めた大学生活の折、奴は体力維持のため、と言ってジョギングを始めた。
時間帯は夜。
大学の講義が終わり、一人暮らしの家のことやら食事やらを終わらせてからで、大概は日の落ちてから幾分時間のたった頃だ。

それが、ある日突然に早朝ジョギングへとシフトした。

「朝の方が涼しくて」

などとそれらしく言ってはいたが、どちらかと言えば夜型のお前が朝早く起きるだなんて実はキツイんじゃないのか?
確かに夜よりも朝の方が涼しくなってきた時期ではあるがそう簡単に変わるものか?
何かあったんじゃなかろうか。

「いえ、特には・・・」

・・・あやしい




その後、様々な手段を駆使して問い詰めたところ、奴は息も絶え絶えにとんでもない原因を教えてくれた。

「じ、つは・・・ふ、不審者と、言いますか・・・変質者に、あい、まして・・・」

つまり、あんまり変態に出くわすものだからついに時間を変えた、と。

なんで俺に一言も相談しないんだこいつは!!!

その後更に何されたどうされたとまたねちっこく体に問い詰め、とりあえず見せられただけということに安堵した。
いや充分に許せないんだがなその変質者め・・・

よりにもよって俺の古泉に俺以外のモノを見せるだとか。
しかし古泉はジョギング中のスペースを即座にあげ、そこから逃げ出したそうなので、そこら辺は誉めてやるべくやさーしく触ってやった。

「朝の方が多少早くてももう明るくなってきましたからね。マシかと思いまして」

一緒に風呂に入る頃にはもう諦めたのか素直にぺらぺら喋りだした。

「確かに早起きはツライですが、これで変なことに巻き込まれずに済むなら苦ではありませんよ。あなたを心配させるのも心苦しいですしね」
「それだったら最初に変態が出た時点で相談しろよ」
「すみません。まさか自分がそういう人に出くわすとは思わず、動揺しまして」
「今度・・・なんてないほうがいいけど、今度そんなことになったらちゃんと話せよ。変態ぐらい俺がとっつかまえてやるよ」
「ふふ、なんだか怖いですね。大丈夫ですよ、時間を変えてから今のところそういう方には遭遇していません」
「ホントだな?本当に変な奴から声かけられたりしてないな?」
「ええ、すれ違いざまや追い越しざまに挨拶していただくぐらいですよ」
「・・・・・・・」
「ジョギングしながら挨拶だなんて爽やかですよね」

「古泉・・・」
「はい?」

まるで地を這うかのように低い声で呼べば、それに気づかない古泉はキョトンと振り返ると固まった。

「俺も一緒に走るからな」

ギリギリと、音でもさせそうにキョンがしかめ面でいた。
変質者だけでなく、何も含みがないであろう一般人にすら嫉妬するのだからキョンも充分変質的と言えるだろう。





「おはようー今日も関心ねぇ」
「あらぁ、今日はお友達と一緒ー!?」
「仲がいいのねぇ」
「ちゃあんとお友達のこと気をつけてあげるのよー」
「まぁまぁ!今日もかっこいいわねー」
「今日もがんばってねー」

ジョギング中、同じように走ったり歩いたりする妙齢のご婦人方とすれ違うたびに古泉に声をかけられているのを見ると、そうでもない、のか?



end
作品名:ジョギング 作家名:由浦ヤコ