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じゅうぞうにちのきんようび

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監督の吹くホイッスルがグラウンドに鳴り響き、容赦無く照り付ける太陽からの一時ばかりの逃避が許される。好きでやっているサッカー、練習自体は苦痛ではない……この太陽がもう少し弱まってくれればの話だが。
尾刈斗にはマネージャーなんて華やかなものが存在しない為、休憩時間となると各々一直線に自分の荷物からドリンクやタオルを持ち出し、さっさと少ない木陰に逃げ込むのが常だ。それは夏休み中の練習でも例に漏れず、今日も変わらず皆わらわらと日陰に集まっていた。

「十三さん」
「鉈先輩、」

相変わらず水分補給がトマトジュースの武羅渡を後目に持参したタオルで汗を拭っていると、名前と苗字両方の呼称で己を呼ぶ声。振り向けば、部活の可愛い一年坊主が二人直立して並んでいる。
何も休憩時間まで立ちっぱなしになることもないだろうに。二人を見上げながら隣の空いている地面をぽんぽんと叩いて座るように促すが、二人はそれを無視して

「「素顔見せて下さい」」

なんてのたまった。



じゅうぞうにちのきんようび





「……NO」
「幽谷くん、やっぱり駄目だったね……」
「おかしいですね。今日は十三さんの素顔解禁日と聞いてきたんですけど」
「なんだその怪情報……誰から聞いたんだ」

まあ聞かずとも見当は付いてる。二人は残念がる様子を隠さず顔を見合わせて俺に月村先輩の名前を告げた。
詳しく聞いてみればその他にも練習の終わる5時丁度にセズーハセズハと呪文を唱えれば仮面の封印が解かれて俺が暴れ出すだの、尾刈斗での練習が終わった後帝国学園にも通っているだのなんだの、作り話もいいとこだ。
幸いにも信じているのが最初のあれだけらしいからまだ良かった。いや、あれを信じるのも正直どうかと思うが。
日陰を見渡して怪情報の発信源を探す。尾刈斗で一番の大木、暗黙のうちに三年生専用となっているその幹に背を預けた月村さんはあっさり見つかった。
目が合った瞬間、一年二人と一緒にいる俺を見て彼は悪びれなく手を上げてからからと笑う。

「幽谷ー!柳田ー!十三の素顔見せて貰えたかー?」
「「無理でしたー」」
「そっかー!残念だったなー!!」
「月村さーん!もう一年を騙すの止めて下さいねー!」

張り上げた俺の言葉にはYESともNOとも答えずただ笑い声だけを返す。
あの人は本当に最上級生なんだろうか。確か前は武羅渡の犬歯は伸縮可能だとか嘯いていた気がする。全く、少しは落ち着いてくれ。
一年をからかうのは程々にしろと念を押そうとした瞬間に、グラウンドに鳴り響くホイッスルと休憩時間終了を告げる灰人監督の怒鳴り声。
いち早くグラウンドに向かって走る月村さんの横顔は先程までのふざけた雰囲気は何処へやら、既にきりりとした10の背番号を負うに相応しいエースストライカーの顔になっている。
これが練習後も持続すればこの人はさぞやモテるだろうにと余計なお世話を胸に抱き、慌ててタオルを荷物に放り投げて白いネットの張られたゴールへ向かった。