わんわんお
それからというもの、何かあるごとにふらふらとどこぞのシャンプーの匂いを振りまいては「おとなしー、泊めてくんねー?」やる事だけやって泊めてもくれねえようなダーリンな訳?と言ったこともあったが、シャンプーどころか精液の匂いそのままによろよろと倒れ込んできた時は流石に風呂に放り込んだ、精液の匂いがうちのシャンプーの匂いに塗り変えられた時にぞくりと背を這いあがったのは何だったか、見て見ぬふりをするにはもう俺もこいつも、限界のように、思えた。
そして今日にいたっては首と両手首に絞め跡なんか残してきやがった、あげく、へらへら笑って「音無ん家なら救急箱とか、ありそうじゃん?」お生憎様、うちには野良犬につける薬は無いんだわ。この駄犬の首ねっこを引っ掴んでベランダへ投げ捨てた、ごん、鈍い音がしたが知らん、思い切り鍵をかけてやる。はっ、信じらんねーって顔。いい気味、いつまでもうちで甘やかしてもらえると思ったら大間違いだ、「なー、俺こういうプレイは専門外なんだけど。」へえ、じゃあどんなプレイがお好みなんですかね、とは聞かずただじとおとそいつを見下ろせば、そいつはため息をひとつ、こぼして。「こんなんしてご近所さんに見られて困るのはお前だかんな。」ああわかってらあ、お前がふらふらしだしたのが俺にはずかしー性癖とやらをぶちまけたあの日からだってことも、お前が俺んとこに帰ってくる度お前の匂いを確認しているこの俺のどうしようない苛々も全部全部、痛いくらいわかってんだ、だから、だからもうおとなしく、うちの子になっちゃいなさいな。