Sweets+
かつん、とスポンジに突き刺したフォークが底の皿にぶつかって硬い音を立てる。抉り取ったスポンジと生クリームを口に放り込み、勢いを取り戻したアメリカの言葉が紡がれると同時に咀嚼された。拗ねたような口ぶりなのに、どこか楽しそうに弾んだ声で文句を連ねるアメリカの言葉に乗り、ドイツも言葉を続けた。
「本当に、あの『何でも分かっている』みたいな態度を取るのはどうやったら改めさせることができるのだろうな。もういいと言っているのに耳元でずっと好きだ好きだと囁かれるこちらの身にもなってもらいたいものだ。……くそ、兄に抱きしめられただけで何も抵抗できなくなってしまう自分すら憎い」
「そうなんだよなあ……。結局、あいつら兄って生き物は卑怯なんだよ。俺が彼に弱いって、分かっててやってるんだ。抱きしめればいいと思ってさ、卑怯にもほどがあるよ。ヒーローは卑怯なやつは許せないんだぞ」
「そうか、ならどうする?」
皿の上に四分の一ほど残ったケーキを全てフォークで掬い、大きく開けた口に投げ入れてもぐもぐと噛んで紅茶を流し込み、かんっとカップを置く。
アメリカはドイツに向かって笑い、唐突に席を立った。
「ヒーローがやっつけてくるんだぞ! そうだ、そもそもイギリスが悪いんだ、いくら言っても俺を子供扱いばっかりして……。うん、あんな卑怯な眉毛怪人、俺がやっつけてやる」
白い歯を見せるように、にかっと笑うアメリカに、ドイツも苦笑気味に微笑んで答える。
「では、俺も狡猾で最低な不憫怪人が帰ってきたら倒してやることにするか」
「そうするといいよ。あとで戦果を教えてくれよな」
「了解した」
じゃあ、Thanks! と手を振り、ばたばたと駆けていくアメリカの背中を見送り、ドイツはちいさくため息をついた。やはり、彼はああでなくては。沈んだアメリカなど見たくない。
ドイツはくすくすと笑いながら、自由で自分勝手で豪快なヒーローが散らかした食器を片付け始めた。
さて、ひとつだけ残ったケーキは、あとで狡猾で最低な男に食べさせるとしよう。甘いケーキを食べて、この俺が抱く甘ったるい気持ちのひと欠片でも味わえばいい。そう目論むドイツは、自分の口元についた甘いクリームを指で拭って舐めた。舌に乗る甘さと、胸に溜まる甘さに、ドイツはもう一度笑った。
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普独・英米前提の弟組が好きすぎて生きるのが辛い。