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【腐drrr】夢見がち愛模様【サンプル】

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「誘ってる、なんて聞けるわけないじゃない・・・」
「え、シズちゃん誰かに誘われてるのぉ?」
ぴくん、動きを止めた静香は声のする方角へ視線を向けた。池袋の力関係を分かっている通行人は、顔を引きつらせてそろそろと静香から距離を取り始める。甘楽はすらりとした脚を組み、かつんとヒールの先でコンクリートを蹴りあげた。
「甘楽、応援するよぉ。相手がみかちゃんなら妨害しちゃうけど、みかちゃんがシズちゃんを誘うとは思えないしぃ」
にこにこと笑いながら髪とともに首を傾げる甘楽へ、静香はぴきぴきとどこかの血管が音を立てる様子を思いながら近くに設置されていたゴミ箱を持ち上げた。ゴミの除去がされたばかりであるゴミ箱は、静香の手によってやすやすと持ち上げられる。固定されていたゴミ箱が不安定に空中で揺らめき、寄るべき場所もないように静香へ捕まっていた。
「甘楽・・・あんたさぁ、あたしがあんたのこと嫌いだって知ってるよね・・・?知っててわざと声をかけてきたってことよねぇ・・・?」
静香はゴミ箱を持ち上げたままにこりと華やかな笑みを浮かべた。こわぁい、甘楽は間延びした声を上げて、ステップを踏むかのようにかつんかつんとヒールで道を蹴っていく。その音に苛立ちを増したようにより一層血管を浮き立たせる静香は、華やかだった笑みに傍若無人な激しさを添えて、狂気すら含んだ瞳を甘楽へ向けた。
「なら・・・アンタに会って心底苛立ったあたしに殺されても文句はないよね・・・!」
「えー、その理屈 文句いっぱいだよ。いつも思うんだけどぉ、シズちゃんってどうしてそう、馬鹿力なわけぇ?」
甘楽の言葉にぴくりと唇を引きつらせた静香は、思い切りの溜めとともにゴミ箱を甘楽へ投げつけた。ゴミ箱をすんでのところで避けた甘楽は、面白くなさそうにナイフを取り出す。
「みかちゃんは優し過ぎるんだから、シズちゃんに同情しちゃって」
ぱちん、と折り畳みナイフを開き、甘楽は赤い瞳をじろりとした嫉妬に焦がして声を上げた。顕著に表れた甘楽の確実な感情へは見向きもせず、静香はゴミ箱を投げて自身の近くにあった自販機を掴む。みしみしと音を立ててコンクリートから離れた自販機に一瞥もくれることなく、甘楽は、みかちゃんは、とこの場には余りにもそぐわない甘い声を上げる。
「みかちゃんはね、甘楽が見つけたの。馬鹿力のシズちゃんに壊されるなんて嫌。みかちゃんは、甘楽のになるんだもん」
シズちゃんは狡い。甘楽の言葉に、静香が眉をしかめた。美しく整った顔立ちがゆがむのも構わず、静香は自販機を持ち上げる。甘楽は冷めた視線で静香を見つめていたが、ふと頬笑みを見せて首を傾げた。
「みかちゃんに同情されてるだけ。一人で可哀想って!」
「・・・黙って 」
自販機を持ち上げたまま、重量のあるそれの影に隠されて表情が見えない静香が冷徹な声音で呟き、自販機を投げた。投げた静香の表情を見つめた甘楽は、けたけたと笑いながらひらりと身をよじらせる。自販機を避けた甘楽は、狡いシズちゃん、と呟き、ふと目を丸めて静香の後方を見つめた。ぱあ、と明るくなった甘楽の表情に、静香も誰がやってきたのか分かって思わす唇を噛みしめる。
「みかちゃん!みかちゃん、みかちゃん!」
何度も声を上げてふるふると手を振る甘楽の視線の先に目をやった静香は、携帯を閉じて、小走りでこちらへ向かってくる帝人を認めて怒りをどこかに無くしてしまった。
「みかちゃん!甘楽に会いに来てくれたんだね!」
「わ、な、何ですか この状況 」
ぴたりと動きを止めて目を丸めた帝人へ、甘楽は恍惚とした表情でにこにこと笑った。対する帝人はおろおろと地面に突き刺さった自販機や標識に視線を彷徨わせ、最終的に静香を見やる。静香はこつこつと靴音を立てながら帝人に近づき、ぐい、と自分の胸元に帝人を引き寄せて強制的に抱きつかせた。よろめいた帝人は静香の背中に手を回し、ぎこちなく手に力を込める。甘楽はその様子に唇を噛み、潤んだ瞳を静香へ向けた。困ったように帝人が口を開きかけるのを留め、静香は勝ち誇った笑みをみせる。
「同情ね。いいんじゃない?そんなものでみかがあたしの手の中に入るんだもの」
「・・・シズちゃん、死んじゃえ」
静香の堂々とした返事に、甘楽は涙を堪えるような悲痛な声で呟き、ナイフを投げてその場から駆けていく。びくりと震えた帝人を安心させるために数回頭を撫でた静香は、ナイフを左手で受け止めて眉を潜めた。ナイフでも薄皮しか切れない自分の体を丈夫だと軽く片づけて、静香はナイフの刃をコンクリートにつき立て、力を込めて曲げる。刃物として機能しなくなったそれを投げ捨てて、ようやく帝人を体から離した静香は、帝人が真青な顔をして自分の掌を見つめていることに気付き 首を傾げる。
「しずさん、血、血が 」
「・・・あ、ほんとだ 」
掌を見つめると、確かにナイフを掴んだ箇所から薄く血が滲みだしている。薄皮が切れた程度と思って軽く指を曲げ伸ばしした静香へ、帝人はあたふたと迷うように眉を潜めた。