【腐デュラララ】アンダースタンド・ラヴ【サンプル】
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「臨也さんが、情報屋を始めたのは 何が切欠だったんですか」
「それは勿論、人への愛だよ。情報屋なんて人を愛するおまけで入ってきたものを好き勝手弄るに過ぎない ちゃちでやらしいものなんだから」
臨也の断定に帝人は瞬きを繰り返し、でも、と狼狽する。それでは、その仕事をしている彼に非日常を感じ取った自分はどうなってしまうのだろう。帝人の戸惑いをしっかりと把握しているらしい臨也は、肩をすくめて帝人の名前を呼んだ。
「がっかりしたかな?」
「がっかりなんて、そんな、 僕は 」
しどろもどろに言い訳を重ねる帝人へ、臨也はくすくすと笑いながらも首を傾げてみせた。余裕も底知れない感情の行方も帝人には重く、臨也が楽しげに声を震わせるたびに帝人はどこへも行けないような奇妙な恐怖感にさいなまれる。混乱してるだけだ、帝人は自らの戸惑いに溜め息をついて、ふるふると首を振った。
「臨也さんは、お仕事されなくていいんですか?」
「仕事の時間も決まってないんだよ、休みもあってなきが如しだけどね」
臨也は目を細めて悦を含めた笑みを見せた。帝人は彼が何かを承諾した、きっと電話先へ送られるのだろう何らかの情報がまた人同士の動きを作るのだという現実に思いをはせているのだろうと考えた帝人は、つくづく自分とは違う非日常を臨也に感じて黙する。
「帝人くんはそのままでいなよ」
臨也は思い悩む帝人に、とん、と声を上げた。帝人が瞬きと共に臨也の名前を呼ぶと、彼は笑みを消して ねえ と呟く。
「俺は人間が好きで、歪んで、こうなった。君はこうはなれないよ、非日常が好きでも日常を愛している君には 」
無理だね。臨也の言葉に多少なりと心が揺らいでしまったことに驚いた帝人は、おろおろと突き放された気分になる自分へ眉を潜めた。臨也はにこにこと毒なんて欠片も持っていないと言わんばかりの態度で笑い続けている。帝人はやがて緩々と溜め息をつき、臨也へ視線を向けて黙りこんだ。
「そんなこと、知ってますよ。僕は普通で平凡で、変わらない没個性です」
「そんなに自分を卑下するものじゃないよ?俺はそんな君を愛しているんだから」
勘違いされますよ、帝人は呆れ声で呟き、臨也を見やった。臨也はきょとりと目を丸め、勘違いねぇ、と呟いては肩をすくめる。臨也の態度に胸のどこか一部分が使えた感覚に苛まれた帝人へ、年若い非日常は目を細めた。
「そう思いたければ思うがいいさ。俺はそれでも、帝人くんのことを愛しているのだから」
作品名:【腐デュラララ】アンダースタンド・ラヴ【サンプル】 作家名:宮崎千尋