きみのなまえをどうかよばせて
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君の名のコノテーション
君は昔から魔法や妖精なんかの話をしていた。そんなもの全く興味はなかったけれど、今なら信じられるかもしれない。だって君の名を呟いただけで涙があふれる、なんて。きっと君の名前は呪文だったんだ。そうだろう?
(100字)
惨めっぽい本意
俺が本当に恐れたのは何だったと思う?憎まれること?疎まれること?嫌われること?確かにどれも恐ろしいものに見えるだろう。だけど俺は、忘れられるのを恐れた。二人で過ごした記憶を消されるのが怖かった。
(97字)
のどなんかずっとまえなくした
声が出ない。何か言わなくてはいけないのに。今の君に必要な言葉を知っている。知っているのに出てこない。俺は黙ったまま。声は失くしたけれど、耳は正常だった。君の小さな泣き声が、俺の鼓膜を揺らしている。
(98字)
撫でる手は震えるけれど
胸の中に眠るのは生まれたての綺麗な生き物。この腕とはあまりにも違う。本当はこんなこと許されない。だけどあの日、お前は頷いてくれた。髪を撫でると寝顔のまま笑う小さな命に、俺は救われたのだと思う。
(96字)
作品名:きみのなまえをどうかよばせて 作家名:しつ