きみのなまえをどうかよばせて
side::西ロマ
うつろうゆめ
最近よく見る夢がある。お前がまだ小さいころの夢。お前は本当に生意気で可愛くなくて働かなくて困った子分やった。そんなお前が、こんなにも俺の頭の中を占めているのは何故?彼が居なくなって一週間が経った。
(98字)
悲しみの色をしている
今年も大好きな赤い実がたくさん捕れた。収穫中に一つをかじってみる。いつも通り甘くて瑞々しいそれは口の中に幸せを運んでくれる。はずなのに。塩辛い味しかしないのは何故?あいつから独立して一年が経った。
(98字)
予感としてなら知っていた
そうや、お前はほんまは強い子や。せやから、いつかは去っていくのだろうとわかっていた。俺に背を向けて歩き出したお前は本当に立派やった。だから俺が泣いたのは嬉しかったからであり、寂しい訳ではないんや。
(98字)
ばかやろうでじゅうぶん
俺だって馬鹿じゃない。本当はあいつには死ぬほど世話になったってわかっていた。だけど結局は最後まで素直に言えなかった。別れの瞬間まで悪態ばかりついて。それでもあいつは、それでじゅうぶんや、と笑った。
(98字)
せりあがる陳腐なことば
三年ぶりに見たロマーノは男前になっとったけど、あの頃と何も変わっとらん。無性に泣きたくなってしまった。それを隠すために彼を抱きしめて、呟いたのは安い言葉。「あいしとるで」なんや、情けない親分やなぁ。
(99字)
てっぺんのひとり
ひとりだけだ、俺の中で誰よりも太陽みたいに輝いているのは。俺に本当の幸せを与えてくれるのなんてひとりしかいなかったんだ。俺はずっと知っていた。「おせぇんだよ、コノヤロー」今さら気付くか、この鈍感男!
(99字)
作品名:きみのなまえをどうかよばせて 作家名:しつ